Research Abstract |
マングローブ水域に出現する魚類とそれらによる水域の利用について明らかにする目的で調査を行った.調査水域は,南西諸島西表島の西部にある東海大学沖縄地域研究センター近くの,ウダラ川マングローブ水域である.調査は,1992年9月7-8日,10月28-29日と11月1-2日に行った.調査項目は,魚類と動物プランクトン採集,水位と水温・塩分の経時観測である.魚類採集は,昼夜各一回水域内の水路を横断して網を張り,下げ潮で出て行く個体を対象に行った.魚類試料は,現場でホルマリン固定を行い,研究室に持ち帰り,種までの査定の後に,体長と体重を測定し,消化管内容物を調べた. 調査水域の水深は,満潮時には約50〜100cmであり,干潮時には小潮であっても干出することがあった.表面水温は,9月26〜29℃,10月23〜26℃,11月20〜23℃であった.塩分は,34〜5の範囲で変化した.採集魚類は,9月7種26個体,10月10種77個体,11月7種47個体,合計10種150個体であり,成体は数個体のみであった.夜間のほうが,採集個体数,種類数ともに多かった.全ての調査に出現した魚種は,アマミイシモチ,コモチサヨリ,コボラとツムギハゼの4種であり,これらの個体数は,全出現個体数の75%を占めていた.これら4種の消化管は,コモチサヨリでは直線でもっとも短く,コボラでは数回巻いてもっとも長く,他の2種はそれらの中間であった.これら4種の消化管内容物は,アマミイシモチでは浮遊性カイアシ類など,コモチサヨリでは昆虫類など,コボラでは付着性藻類など,ツムギハゼでは底生性端脚類などであった.この結果から,4種の魚類の摂餌場所は,コモチサヨリでは水面,ツムギハゼでは底泥上、コボラとアマミイシモチでは河川域の岩やマングローブ付近と推定される.本年度の研究概要は,平成5年度日本水産学会春季大会などで口頭発表の予定である.
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