1992 Fiscal Year Annual Research Report
渦鞭毛藻及び緑藻を用いたジメチルプロピオテチンの生合成に関する遺伝子工学的研究
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04660225
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 有恆 京都大学, 農学部, 助教授 (50027190)
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Keywords | ジメチルプロピオテチン / 硫化ジメチル / アナアオサ / 渦鞭毛藻 / 遺伝子導入 / プロトプラスト / メチオニン脱炭酸酵素 / DNAライブラリー |
Research Abstract |
沿岸海域、沖合海域、さらには外洋海域における揮発性含硫有機化合物の大部分が硫化ジメチルで占められることについては既に報告してきたが、本年度はこの物質がどのような代謝経路を経て作られるかにつて研究した。材料として主として用いたのは、大型藻類であるアナアオサ(Ulva pertusa)と微細藻類である渦鞭毛藻のCrypthecodinium cohniiである。 (1)アナアオサからプロトプラストを高収率にかつ安定に作りだす方法ならびに条件を確立した。 (2)(1)で得られたアナアオサのプロトプラストヘエレクトロポレーション法を用いて外部遺伝子を導入する条件を検討した。Crypthecodinium cohniiについてはプロトプラストを作製することが非常にに困難であることが判明したので、細胞に直接エレクトロポレーション法、レーザー法、マイクロインジェクション法ならびにパーティクルガン法をもちいて遺伝子導入をする方法を検討し、マイクロインジェクション法を用いるのが有効であることが明らかになった。 (3)アナアオサおよび渦鞭毛藻(海産のC.cohniiおよび淡水産のPeridinium bipes)は硫化ジメチルを大量に生産するが、この硫化ジメチルの前駆体はジメチルチオプロピオン酸であることは以前から明らかになっていた。そこで、このジメチルチオプロピオン酸はメチオニンの脱炭酸反応、脱アミノ反応およびメチル化反応を経て作られることを明らかにし、代謝中間体としてメチルチオプロピオン酸が存在する可能性を明らかにした。また、この代謝系の鍵酵素であるメチオニン脱炭酸酵素の存在を明らかにし、精製をおこなった。 (4)遺伝子工学的な研究をおこなうためには、目的とする生物の遺伝子を決定する必要があるが、本年度は、渦鞭毛藻のC.cohniiの核遺伝子ライブラリーを作製するとともにP.bipesのcDNAライブラリー用のRNAを抽出することに成功した。このことにより、種々の遺伝子を検索するこたが容易となった。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Aritsune Uchida 他: "Seasonal variation of dimethysulfide in coastal waters of Maizuru Bay" Nippon suisan Gakkaishi. 58. 255-259 (1992)
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[Publications] Aritsune Uchida 他: "The distribution on dimethylsulphide in the waters of offshore Japan Islands and subtropica and tropical Pacific Ocean" Nippon suisan Gakkaishi. 58. 261-265 (1992)
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[Publications] Aritsune Uchida 他: "Incorporation of methionine into dimethylthiopropanoic acid in Crypthecodinium cohnii" Nippon suisan Gakkaishi. 59. (1993)
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[Publications] 内田 有恆: "多角的利用の展開‐5.環境問題への応用" 「微細藻類の多角的利用の現状と将来展望」日本水産学会平成4年度春季大会シンポジウム. (1992)
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[Publications] A.Uchida 他: "Distribution of dimethylsulphide and biosynthesis of its precursor (dimethylthio propanoic acid)" The 6 International Symposium on Microbial Ecology. (1992)
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[Publications] 近藤 竜二 他: "海底泥から分離した硫酸還元菌のフェレドキシン遺伝子の塩基配列" 日本水産学会平成5年度春季大会. (1993)
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[Publications] 内田 有恆: "水産学シリーズ 91微細藻類の利用(日本水産学会監修、山口勝己編)" 恒星社厚生閣, 132 (1992)
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[Publications] 内田 有恆: "微生物の生態-微生物のガス代謝と地球環境" 学会出版センター, (1993)