1992 Fiscal Year Annual Research Report
農業用水の合理化とその進展及び地域的功罪に関する研究
Project/Area Number |
04660259
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
佐藤 俊郎 東京農業大学, 農学部, 教授 (50078060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 好男 東京農業大学, 農学部, 講師 (40078192)
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Keywords | ミタメシ / 地域用水 / 水利権 / 維持管理 / 国土保全 |
Research Abstract |
課題に沿って、筑後川中流域の大石堰、山田堰、床島堰及びその堰掛地域、川上川(嘉瀬川)の石井樋(現川上頭首工)及び、松浦川の石井手と馬頭サイホン工とその周辺立地、人吉盆地を貫流する球磨川に水源をもつ百太郎堰・幸野溝用水、白川に水源をもつ馬場楠井手(はなくぐり)、脊梁をなす地形を延々と引く元禄井手、川内川上流曽木の滝から取水する曽木堰、大野川上流域に水源をもち、複雑な立地に讙水する荻柏原用水、通潤橋等々の水利施設と地域との関連を調査することができた。何れも独特な施設構造であり、地域文化の極致とも思われる施設である。これらは地域民の叡知と永年にわたるミタメシによって藩制期に築造されたものであり、その築造の技術、手法がすぐれているばかりではなく、施設の及ぼす地域的諸機能及び、その維持管理の手法にも独特な地域的特性を持っていたし、現在でもそれを継承しているものが多い(石井樋のように新たなる頭首工に改造されたものもあるが)。 他方、急速に進められた経済構造の変化に伴って水利施設の維持管理についての農業及び農民の対応が、誠に困難化しつつあり、農業用水、施設の持つ地域的諸機能は特続できなくなりつつあり、更に政策上からの減反によって農業用水は地域農民の犠牲の上にようやくその形骸を保っている観がある。また、これらをカバーしようとする単目的・画一的農業用水事業に対しての施策は更に大きな地域問題を内包している。東北とともにわが国農業の中核をなす九州地方において、このような現状であることを、調査を通じて、地域保全、国土保全の問題として、その反省をしなければならないことを痛感した。
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