1993 Fiscal Year Annual Research Report
農業用水の合理化とその進展及び地域的功罪に関する研究
Project/Area Number |
04660259
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
佐藤 俊郎 東京農業大学, 農学部, 教授 (50078060)
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Keywords | 地域用水 / 水利権 / 国土保全 / 地域文化 / 水環境 / 地域経済 |
Research Abstract |
農業用水の基本的要因と地域との関連について、主に木曽川下流域を対象として調査研究を行った。木曽川下流域の濃尾平野の水利開発は、わが国では利根川の中流域(現中川流域)と共に藩制時代に幕府の直轄及び藩の事業として行われた典型的な近世の土木技術を駆使して造成されたものである。前年に調査研究を行った筑後川の中流域とは、時代的には概ね一致するが、その内容においては全くその性質を異にする。しかし、事業としては、藩がどれ程この濃尾平野の立地を熟知していたかが、筑後中流域の水利と対比する上で重要なポイントとなる。三百年を経た今日においても、この基本的な社会性がほとんどそのままの形で反映しているように思慮された。地域の数少ない指導者によって問題は提起されてはいるものの、本地域の農業用水合理化の所作は、行政による計画の鵜呑み的な実施であり、その地域的追認である。そして、それらの結果としての地域内における齟齬は、また行政によって是正されようとしている。この点制度的にも、技術的にも、特徴的な地域性に乏しい。濃尾用水事業の用水量の決定がそれであり、新たなる用水施設の構造・布設とその維持管理及び地域用水としての農業用水の地域的効果機能のカットがそれである。藩制期における木曽川筋の水利・治水は、優れて「木の文化圏」に属している。財政と計算技術の問題があり、当時においては藩による河川土木の技術も、この流域の属地性を無視して事業を進めることはできなかったからである。本年度の調査研究において特に教えられたことは、農業用水の地域養育的着想の発見(農業用水の地域的血脈的思想についてはすでに昭和30年代に着想を得ている)と地域の歴史に立脚した自然と人文とをふまえての属地的「木の文化」による農業用水の地域機能についてである。
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