Research Abstract |
家畜の福祉の観点から,イギリスやドイツでは繁殖豚の個別飼育に代わる管理システムとして,ウェルフェア-ファームを試験的に開発している.このシステムは,豚の行動の制約は緩和するために,繁殖豚の群飼管理を基本として設計されている.本研究者らも,2年前から文部省科学研究費を受け,豚の福祉と省力化を両立させることを目的とし,このシステムにコンピュータ個体自動給餌機を導入して研究を行なっている.ところが、個体給餌機内における陰部喰いや闘争行動が頻繁に起こり,ソフト(プログラム)に問題のあることが認められた.また,システム外に分娩房が設置されており,管理の省力化が望めないだけでなく,分娩後,豚をシステム内に再導入する際に,闘争が起こることが明らかとなった.そこで,本研究は,コンピュータ個体識別システムによる群飼豚管理におけるハード及びソフトの改善を目的として行なった.個体給餌機内での闘争の一因が、飼料放出間隔が長く1頭の豚の摂食時間が延びることにあると考えられたため,コンピュータプログラムを変更し,飼料の放出間隔を30秒に短縮した.また,豚群の構成を変えることなく繁殖管理を一貫して行なうために,システム内に分娩房を設置した.その結果,個体給餌機の利用は,ある程度,改善されたが,闘争は完全には無くならず,社会的順位の低い豚の摂食が阻害されることも認められた.一方,分娩房をシステム内に設置したことで,群の入れ替えが無くなり,それに伴う闘争行動も見られなくなった.また,豚の移動に伴う労力も緩和され,この方式で管理すると省力化にもつながることが示唆された.また,分娩房に隔離する期間も従来の25日から,3日間へと大幅に短縮したため,分娩後の豚の運動量も増加し,従来の飼育方式で見られたストレス性の異常行動も見られなくなった.以上の結果から,さらなる個体給餌機の改良が必要であると考えられた.
|