1992 Fiscal Year Annual Research Report
犬の乳腺腫瘍における癌胎児性抗原様物質に関する免疫病理学的研究
Project/Area Number |
04660337
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
代田 欣二 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (70147974)
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Keywords | 腫瘍 / CEA / 犬 |
Research Abstract |
犬の乳腺病変150例の組織について、抗ヒト癌胎児性抗原(CEA)抗体をもちいて免疫組織化学的に検索した。ポリクロナル抗体(DAKO社)に対する反応性は悪性腫瘍で87%(46/55例)、良性腫瘍で80%(44/55例)、非腫瘍性病変で69%(27/39例)が陽性であった。悪性腫瘍の中では腺癌が33例中31例が陽性で、他の組織タイプの癌(充実癌、未分化癌、扁平上皮癌、紡錘形細胞癌)では16例中9例、悪性混合腫瘍では全例(6例)の悪性上皮成分に陽性反応が認められた。細胞質内の反応は、腫瘍細胞では非腫瘍性乳腺上皮細胞に比較して強く、陽性率が高かった。特に腺癌では陽性率が高く、細胞質が均一に染色される細胞が多かった。一方、細胞膜は71例が陽性で、大部分の症例(63例)では自由縁のみが染色されたが、8例の悪性上皮細胞(腺癌4例、悪性混合腫瘍2例、未分化癌2例)では細胞全周が陽性反応を示した。また、この細胞膜全周の強い陽性反応が、転移巣においても原発部と同様に保たれていることも確認された。犬の乳腺癌、正常犬大腸粘膜を用いSDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動法を行い、DAKO社製のポリクロナル抗体、モノクロナル抗体(クローンA5B7)を用いてウエスターン・ブロット法を実施した。その結果、乳腺癌では約133KD、90KDのバンドが両抗体により検出され、ポリクロナル抗体ではさらに、約55KDのバンドが確認された。大腸粘膜では両抗体で90KDのバンドが確認された。 以上の結果より、犬の大腸粘膜上皮、乳腺にはCEA様物質が存在し、乳腺腫瘍、特に悪性腫瘍細胞ではその発現が増し、細胞膜における局在形式が変化することが明らかにされた。さらに、最近入手したヒト由来CEAに対する多数のモノクロナル抗体と、精製CEAを用いて、本研究によりその存在が明らかになった犬のCEA様物質の免疫学的、生化学的解析と分子生物学的解析を計画している。
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