1992 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト未熟B細胞における免疫グロブリン発現の遺伝子的解明
Project/Area Number |
04670174
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 尚義 名古屋大学, 医学部, 助教授 (90045732)
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Keywords | non-T ALL / λ鎖様遺伝子 / λ鎖様遺伝子産物 / λ_5 / VpreB_1 / pre-B細胞 |
Research Abstract |
未熟B細胞における免疫グロブリンの発現はμ→κ→λの順に起こるとされている。pre-B細胞前後の成熟段階に相当する腫瘍と考えられるnon-TALL(非T細胞性急性リンパ性白血病)症例では免疫グロブリンの発現順序に従ってκ陽性例がλ陽性例より多いことが期待させる。我々は小児および成人non-T ALL48症例につき、主として免疫電顕を用いて白血病細胞における免疫グロブリンの発現を検討した。その結果期待に反して18例の軽鎖陽性例のうち17例までλ陽性を示し、κ陽性例は1例のみであった。最近阪口、工藤らはマウスpre-B細胞に特異的に発現するλ鎖様遺伝子およびその産物を見い出し、λ_5,VpreB_1などと命名した。これらの遺伝子およびその産物はpre-B細胞の段階に一時的に出現し、λ鎖と高い相同性を有し、胞体内μ鎖合成の促進やμ鎖が細胞表面に表出されるのを助ける働らきを有するとされている。今回我々が見い出したnon-T ALLにおけるλ鎖陽性物質がλ鎖様遺伝子産物か否かを同定するため、培養細胞株について検討を行なった。用いた培養細胞株はNALM-6,NALM-16,KM3,Rehである。このうちNALM-6は免疫電顕でμ,λ陽性、他はいずれもλ鎖のみ陽性であった。遺伝子解析ではJ_Hのプローブでは4例いずれも再構成バンドが認められたが、cλプローブではいずれも再構成バンドは認められなかった。このように免疫電顕でλ鎖陽性であったにもかかわらず、λ鎖遺伝子の再構成は認められなかった。λ鎖様遺伝子は再構成しないことが知られており、我々が今回免疫電顕で証明したλ鎖陽性物質がλ鎖様遺伝子産物であることを裏付ける有力な傍証と考えられる。今後λ鎖様遺伝子に特異的とされるオリゴヌクレオチドをpCRで増巾し、このプローブを用いて培養細胞株のRNAにつきNorthern blsttingをほどこし、λ鎖様遺伝子であることを証明していく予定である。
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[Publications] Mori N: "Demonstration of intraoytoplasmie immunoglobulin in non-T ALL Cases of children with immunoelertron microscopy" Cancer. 61. 2231-2238 (1988)
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[Publications] Mori N: "Predominant ex pression of λ light chain in the adult cases with non-T ALL and CML in lymphoid blast crisis" Cancer. 68. 776-780 (1991)