1993 Fiscal Year Annual Research Report
ATLウイルスの混合感染が糞線虫症の治療効果に及ぼす影響に関する免疫学的研究
Project/Area Number |
04670234
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
佐藤 良也 琉球大学, 医学部, 教授 (60092699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 潤 琉球大学, 医学部, 助手 (70225514)
當真 弘 琉球大学, 医学部, 助手 (80231447)
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Keywords | 糞線虫症 / 日和見感染 / ATL / HTLV-I / 治療効果 / 免疫応答 |
Research Abstract |
昨年度において治療を実施した患者において、治療前の免疫学所見と治療効果との関連を検討した。その結果、本線虫に対する血清抗体価と治療効果の間には全く関連性を見いだすことができず、HTLV-I感染者において抗-糞線虫抗体のレベルが特に低いという傾向も認めることはできなかった。また、血清中の総IgEレベルは治癒群でやや高い傾向にあったが、治癒群と未治癒群の差は統計学的に有意のものではなかった。他方、末梢血の好酸球比率は逆に未治癒群で著明に上昇傾向にあり、当初の予想に反するものであった。同様に、末梢血中のリンパ球はやはり末治癒群においてヘルパーT細胞の相対的増加傾向、活性化T細胞の増加傾向が認められ、治療効果とリンパ球の動態との間に予想された関連を見いだすことができなかった。未治癒群での好酸球増多傾向は恐らく増悪傾向にある糞線虫の感染が好酸球反応を強く惹起し、この感染増悪傾向が治療抵抗性を示した結果と考えられ、好酸球が治療効果に関係しないことを示唆する結果とは考えられなかった。また、未治癒群でヘルパーT細胞や活性化T細胞が増加傾向にあったことは、未治癒群にHTLV-I感染者が多く含まれることを反映したものと判断された。HTV-I感染者ではリンパ球の動態にかかる異常を来すことが既に知られている。 本研究を通して得られた結果は、当初予想したような糞線虫症の治療効果の低下と免疫応答能の低下を関連づけるものではなかった。その原因のひとつは検討した免疫学的所見が血清抗体値の比較を除けばいずれも本線虫に特異的なものではなかったことが考えられる。また、今回は比較的治療効果の低いポキールによる治療者を対象に検討を行なったことも原因のひとつに考えられる。今後はより治療効果の高い薬剤による治癒効果と免疫応答との関係や本線虫に対する特異的リンパ球反応についての検討が必要と判断された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 佐藤良也、城間祥行、大鶴正満: "糞線虫症とATL、糞線虫とHTLV-Iの高率な混合感染とその背景" 琉球医学会誌. 162. 3-12 (1993)
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[Publications] 當真 弘、佐藤良也 他: "アルベンダゾールによる糞線虫症治療成績" 寄生虫誌. 42. 300-307 (1993)
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[Publications] Sato,Y.et al.: "Reduced efficacy of chemotherapy might accumulate concurrent HTLV-I infection among strongyloidiasis patients in Okinawa,Japan." Trans.Roy.Soc.Trop.Med.Hyg.88. 59 (1994)