1992 Fiscal Year Annual Research Report
内毒素の素性に対するトレランス誘導機構の分子生物学的研究
Project/Area Number |
04670251
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
松浦 基博 自治医科大学, 医学部, 助教授 (20150089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 慎二 自治医科大学, 医学部, 助手 (50195989)
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Keywords | エンドトキシン / エンドトキシンショック / エンドトキシントレランス / 合成リピドA類縁化合物 / リポポリサッカライド / 腫瘍壊死因子(TNF) |
Research Abstract |
エンドトキシンはグラム陰性菌の細胞壁成分であり、菌体から遊離すると生体にとって有益な活性も障害的な活性も多彩に発現する。グラム陰性菌感染による敗血症に伴うエンドトキシンショックは代表的な障害的活性である。そのショックの誘発時には、エンドトキシンに対する宿主の感受性が著しく上昇していることが示唆され、感受性を高めた動物実験モデルも開発されている。本研究でも感受性を高めたマウスを用い、エンドトキシンの本体であるリポ多糖(LPS)の投与により致死作用を誘導し、ショックのモデルとした。このモデルで事前に微量のLPSを投与しておくと、通常は致死量のLPSを投与しても、マウスは抵抗性を示し生残する(エンドトキシントレランス)。LPSの活性中心はリピドAと呼ばれる成分で、その構造類縁体も種々化学合成されている。それらリピドA類縁化合物の中に、発熱性(エンドトキシンの障害的活性の代表的指標)は示さないが、LPSに代わってトレランスを誘導できる化合物を数種見い出した。これら化合物を用いトレランス誘導機構の解析を行った。ショックの誘発に関与する主なサイトカインと示唆される腫瘍壊死因子(TNF)に対する抗体を投与すると、このモデルでもLPSの致死作用を抑制できた。そこで、LPSまたはリピドA類縁化合物によるトレランス誘導下で、LPS投与によるマウス血清中TNFの上昇に対する効果を検討し、抑制効果を見い出した。生体内でTNF産生の中心的細胞であるマクロファージ系細胞を用いて、細胞レベルでもLPSやリピドA類縁化合物がTNF産生に抑制をかけ、しかもmRNA発現レベルで既に抑制をかけていることを見い出し、分子レベルでトレランス誘導機構の解析を発展できた。また、組換えTNFを用い、TNFの致死作用に対しても、LPSやリピドA類縁化合物がトレランスを誘導できることを見い出し、トレランス誘導機構研究の新展開として複数段階の抑制の関与を示唆する結果をも得た。
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