1992 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的手法を用いたMRSAの遺伝的多様性の解析
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04670254
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
平松 啓一 順天堂大学, 医学部, 教授 (10173262)
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Keywords | MRSA / リボタイピング / パルスフィールド / mecA / mecI / コアグラーゼ |
Research Abstract |
コアグラーゼ型、ファージ型、プラスミド型など従来の疫学的手法を用いて、世界各国のMRSA分離株、ひとつの病院(マラヤ大学病院)における継時的(3年間)分離MRSA株を対象として疫学的解析を行なったところ、コアグラーゼ型別で4〜5型に、ファージ型別では、せいぜい2型にしか分類できなかった。プラスミド型別では一病院内のMRSA株は9型に分類できたが、安定性に問題があった。一方、リボタイピングによれば世界各国分離株は系統樹にまとめることができ、1961年に英国で分離されたMRSA株が世界各地に徐々に広がっていった伝達様式が浮き彫りにされた。さらにパルスフィールド電気泳動、mec領域DNAの塩基配列の決定により、1985年分離の米国株と現在日本中に蔓延しているMRSA株がきわめて近似の遺伝形質を持っていることが明らかになった。すなわち、各国間の交通が盛んになり、MRSA株が世界各地に人の往来によって伝播してゆく過程が推測された。リボタイピングは、ひとつの病院内のMRSA伝播の疫学的方法としては、あまり役に立たないことがわかり、50株が5型に分類されたのみであった。挿入配列IS431を用いたISタイピングでは同株は19型に分類され、パルスフィールドによれぱ26型に分類された。したがって院内感染のモニタリングにはISタイピング、パルスフィールド電気泳動法が適しており、両者を組み合わせれば50株を41の型に分類することができた。このようにして、個々の臨床分離株をゲノタイピングにより鑑別することが可能であることが示された。さらにmecA遺伝子の抑制遺伝子であるmecIは、しらべた全例のMRSA株で、種々の点突然変異を有しており、このことを利用してさらに厳密な疫学が行なえることが示された。
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