1993 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素によるDNA損傷の定量化とその防御機構の解析
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04670308
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹内 亨 大阪大学, 医学部, 助手 (00188161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 兼曩 大阪大学, 医学部, 教授 (20143414)
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Keywords | 活性酸素 / 8ヒドロキシデオキシグアノシン / DNA損傷 / アスベスト |
Research Abstract |
老化及び成人病の発症と深く関わっている活性酸素による細胞障害を、酸化的DNA損傷の代表的な指標でしかも変異を誘発する8ヒドロキシデオキシグアノシン(8OHdG)を指標に、定量評価し、その損傷誘発機構を解析した。好中球あるいはマクロファージに分化し得るヒト前骨髄球性白血病細胞(HL60)を用い、実験を行った。好中球様に分化したHL60に、オプソニン化したアスベストを添加することにより活性酸素(O2-)の発生をESRで確認した。しかし、この系では、8OHdGはほとんど誘発されなかった。一方、マクロファージ様に分化したHL60に、アスベストを添加すると、活性酸素の産生増加は認められなかったが、細胞はアスベストを貪食し、8OHdGの増加が認められた。このアスベストによる8OHdGの増加は、カタラーゼやSOD(活性酸素を除去するに十分量の)では抑制されず、貪食抑制剤のサイトカラシンBで抑制された。アスベストは活性酸素の1つであり生体内(細胞内)で常に産生されている過酸化水素をより活性の高いOHラジカルに変換することが報告されている。これらの結果から、活性酸素が発生すれば必ず酸化的DNA損傷が生じるのではなく、活性酸素の発生する場所もDNA損傷誘発に重要な要因であることが解った。すなわち、アスベストが貪食により核の近傍に取り込まれ、そこでより活性の高い活性酸素を産生することにより、8OHdGが誘発されると考えられる。それ故、8OHdG誘発を防御するには、DNA近傍の活性酸素を効率よく除去する必要があることが解った。ヒト細胞における酸化的DNA損傷を把握する目的で、健常者集団におけるヒト末梢血白血球中の8OHdGを定量した。活性酸素産生能の高い好中球は、単核球とほぼ同量の8OHdGを有していた。また、白血球調整時に赤血球が残存すると、DNA抽出過程で8OHdGが人工的に生成することが解った。年齢やライフスタイル要因である喫煙・飲酒と8OHdG値の間に相関は認められなかったが、これは8OHdG値の分布の幅が8OHdG測定誤差に比べ小さいためと考えられた。年齢幅の広い集団・個人間のライフスタイルが大きく異なる集団での解析が必要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Takeuchi,T.他: "Increased formation of 8-hyolroxydeoxyguanosine,an oxidative DNA damage,in lymphoblasts from Fanconi's anemia patients due to possible catalase deticiency" Carcinogenesis. 14. 1115-1120 (1993)
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[Publications] Takeuchi,T.他: "Spin trapping of superoxide released by opsonized asbestos from human promyelocytic leukemia cell line,HL60" Biochemical and Biophysical Research Communications. 194. 57-64 (1993)
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[Publications] Morimoto,K.他: "Chromosome alterations in peripheral lymphocytes as indices of lifestyle and genotoxicity" Int.Arch.Occup.Environ.Health. 65. S37-S41 (1993)
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[Publications] Takeuchi,T.他: "Crocidolite asbestos increased 8-hydroxydeoxyguanosine levels in cellular DNA of a human promyelocytic leukemia cell line,HL60." Carcinogenesis. (in press).
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[Publications] Takeuchi,T.他: "Elevated Chromosome aberration frequency after X-ray exposure of cultured fibroblasts derived from patients with porokeratosis" Cancer Genet.Cytogenet.(in press).
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[Publications] 竹内亨他: "DNA損傷を指標とした遺伝毒性評価" 日本衛生学雑誌. (印刷中).