1992 Fiscal Year Annual Research Report
各地に蔓延中の山蛭バイオハザードの諸問題-南房総での環境医学的追跡を中心として-
Project/Area Number |
04670317
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉葉 繁雄 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90056549)
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Keywords | ヤマビル / ニホンヤマビル / 山蛭バイオハザード |
Research Abstract |
1. 千葉県天津小湊町(小湊の略)の観察定点では,年間の活動期間が後方(秋→冬)へ延長してきた。生息密度(採集数)も92年の最高値は9/19:815(毎分3.13)匹,第2位の10/15:721(毎分2.42)匹も過去6年間の新記録で,異常大繁殖は依然進行中と判断された。 2.小湊以外の異常繁殖域:秋田県(秋田市上新城,南秋田郡井川町と五城目町),群馬県水上町,静岡県大井川上流仙頭,神奈川県丹沢山塊札掛では,生息密度(毎分出現数)で最高(1.283匹)の五域目町でも小湊を下回り,全て標高100〜600mの内陸性低山地帯で農山林業者やハイカーが主に襲われる点が,標高2〜3mを含み塩風を受ける海岸沿いの低地で主に地域住民や一般通行者が被害を受ける小湊と対照的であったが,小湊における伝搬宿主のシカ(ホンシュウジカ)に担当すると推定される野獣として,秋田県と水上ではニホンカモシカ、丹沢ではシカ,仙頭では両種が出現・徘徊する点では小湊と共通した。 3.以上の各地の異常繁殖は,勃発した年代を異にするが,繁殖域を拡大しつつある 小湊では海(南)側を除く3方(西:鴨川市,北:大多喜町,東:勝浦市)へ浸潤性に波及したが,河川流(流木に付着)や地上歩行性野鳥が関与すれば,東京港沿いなど西方の遠隔地へ転移性に拡大する可能性も推測された。 4.a)吸着力は前吸盤よりも後吸盤の方が強く,夫々最大値は70gおよび150gであった。b)木酢液製剤ビンチョーゲン(和歌山県南部川村森林組合)の対ヤマビル平均忌避効力は50%D.E.T.の73.4%であった。c)抗山蛭抗体陽性のC型肝炎患者を吸血して死んだヤマビルから病原ウイルス(HCV‐RNA)が,PCR法で検出された。d)ヤマビルに反覆吸血されたヒトとウサギの流血中には好塩基斑点赤血球が出現した。e)特殊部位の被害として,右鼻腔内吸血例と,公衆便所内での陰茎吸血例があった。
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[Publications] 吉葉 繁雄・石井 美恵子: "ニホンヤマビルの吸血による抗ヤマビル抗体産生と抗体によるヤマビル生息密度の免疫学的制御" 千葉大学理学部海洋態系研究センター年報. 12号. 61-64 (1992)
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[Publications] 石井 美恵子・吉葉 繁雄: "ニホンヤマビルの駆除対策-薬剤の有効性の実験" 千葉大学理学部海洋生態系研究センター年報. 12号. 65-68 (1992)
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[Publications] 吉葉 繁雄・石井 美恵子: "南房総におけるヤマビル異常大繁殖の6年間の動向と国内他地域における実態" 日本衛生学雑誌. 48. (1993)
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[Publications] 吉葉 繁雄: "大発生したニホンヤマビルによる産業災害としての山蛭バイオハザード" 産業医学. 35. (1993)