1994 Fiscal Year Annual Research Report
高血圧の発現に関与する環境要因、遺伝要因の疫学的研究-2世代にわたる長期間の追跡調査成績を中心とした分析-
Project/Area Number |
04670324
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
磯 博康 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (50223053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋本 喬 筑波大学, 社会医学系, 教授 (50143178)
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Keywords | 高血圧 / 環境要因 / 遺伝要因 / 追跡調査 |
Research Abstract |
高血圧の発現に関与する要因について、(1)主として環境要因の検討としての、正常血圧者の6〜8年後の血圧値の追跡調査と、(2)主として遺伝要因の検討としての、2世代間の血圧値の比較の2方向より検討を行った。 1.正常血圧者の血圧値の追跡調査 正常血圧者が6〜8年後、高血圧(最大血圧値160mmHg、又は最大血圧値が95mmHg以上、又は降圧剤服薬開始)を呈する者と、そうでない者の比較分析により高血圧出現の環境要因を分析した。その結果1960年代のコホートでは肥満と高血圧出現との関連はみられなかったが、1970年代、及び80年代のコホートでは両者の間に有意な関連が認められた。この背景として、1960年代後半からの農業労働の大幅な機械化による肉体労働の軽減が一因と考えられた。また、心エコー法より算出した心重量の比較的大きい正常血圧者は心重量の小さい正常血圧者に比べその後の上昇が大きいという成績を得た。 心重量と血圧上昇との関連は、比較的肉体労働が強く心内径の大きい秋田農村住民よりも、肉体労働が少なく心内径の小さい都市勤務者において、より明らかに認められた。すなわち、肉体労働の影響を強く受けた心内径の大きい者を除き、心重量は従来の血圧値の上昇を測定する一要因であることが示された。 2.秋田農村における2世代間の血圧値の分析 平成6年度までに同定された親子ペアのうち、子-父-母がそろった子(35〜49歳)の242組について分析を行った結果、親子が同一年代の血圧値に関して、息子は父親に比べ、最大血圧値が約10mmHg低値を示し、娘は母親に比べ最大血圧値が約3mmHg低かった。このことは、1960年代から1980年代にかけての食生活や労働を中心とする環境変化によって、血圧値の低下が特に男子において強く起こったことを示している。息子と父親の間で血圧値に相関がみられなかったことは、親子間の遺伝的影響力が環境変化の影響に比べて弱いことを示唆している。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Shimamoto,H.Iso et al.: "Trends in the incidence of cardiovascular diseases and their risk factors in a rural Japanese population" J of Epidemiology(Suppl). 2. 123-126 (1992)
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[Publications] 嶋本喬、磯博康 他: "軽症高血圧の疫学" 日本臨床 増刊 高血圧(下). 639. 287-295 (1992)
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[Publications] Iso H,et al.: "Left ventricular mass and subsequent blood pussure changes among middle-aged men in rural and urban Japanese population" Circulation. 89. 1717-1724 (1994)
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[Publications] 嶋本喬、磯博康: "日本人の血圧" 医学のあゆみ. 169. 527-532 (1994)
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[Publications] Shimamoto T,Iso H,et al: "Can Blood Pressure in the Elderly be Reduced? Findings From a Long-term Population Survey in Japan" AM J Geriat Cardiol. 3. 43-50 (1994)