1992 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児突然死症候群における肺臓での換気障害に関する病理組織学・超微形態学的研究
Project/Area Number |
04670350
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大谷 勲 岐阜大学, 医学部, 教授 (80021393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 一也 岐阜大学, 医学部, 助手 (00229410)
武内 康雄 岐阜大学, 医学部, 助教授 (50165510)
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Keywords | 乳幼児急死症候群 / 肺臓 / 肺水腫 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
現在までに検索した25例の乳幼児突然死症候群(SIDS)での病理組織学的検討では全例に肺浮腫が認められ、肺浮腫は殆んどの例では肺胞領域に強く、肺静脈や気管支周囲、肺臓の臓側胸膜や小葉間胸膜にもに認められた。また、1例においては肺静脈・気管支周囲に最も強く認められた。これに対して、対照に用いた7例の窒息死例(絞頚等)や8例の溺死例ではややその程度は低かったが、全例に肺胞領域を中心とする肺浮腫が認められ、頭部外傷で死亡した1例では軽度の肺胞領域を中心とする肺浮腫が認められた。これらの結果は、SIDSの事例では窒息死例や溺死例と同様に肺胞の毛細血管からの浮腫液が肺水腫の発生に強く関与していることを示唆しており、肺胞領域の変化が注目される。なお、肺浮腫の発生原因としては血小板から放出されるヒスタミン等が関与する事が知られているが、各事例に認められる血小板等からなる微小血栓の出現の程度を肺臓の組織1cm^2中に認められる微小塞栓の平均個数を指標として検討すると、胃内容の肺内への吸引をともなったSIDS事例では3.8〜32個/cm^2(平均10.9)、肺内吸引をともなわない事例では0.3〜4.9個/cm^2(平均1.8)、絞・扼頚等による窒息事例では4.2〜12.5個/cm^2(平均7.6)、溺死例では2.8〜7.5個/cm^2(平均4.8)であり、微小血栓の程度と肺浮腫の程度の間にはいわゆる相関関係は認められなかった。エポン包埋樹脂標本を用いたSemithin sectionによる観察ではSIDS例では所々に肺胞壁に著明な浮腫を認め、電子顕微鏡による観察でも肺胞壁に浮腫を認めている。肺水腫の発生領域として注目される肺胞壁では、一部の肺胞上皮や毛細血管の内皮細胞に部分的に軽度の水腫様変化を認める以外、特段の変化は認めていない。
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