1993 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児突然死症候群における肺臓での換気障害に関する病理組織学・超微形態学的研究
Project/Area Number |
04670350
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大谷 勲 岐阜大学, 医学部, 教授 (80021393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 一也 岐阜大学, 医学部, 助手 (00229410)
武内 康雄 岐阜大学, 医学部, 助教授 (50165510)
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Keywords | 乳幼児突然死症候群 / 肺 / 肺水腫 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
現在までに4例の乳幼児突然死症候群(SIDS)で死亡した法医剖検例についての電子顕微鏡による観察を行った。個々の事例により差はあるが、全例に肺胞壁や気管支周囲の結合織に浮腫を認めている。SIDS事例に認められる肺水腫は肺全体にびまん性に均一に認められるものではなく、部位によってかなりの差が認められた。SIDS事例において肺水腫により換気障害が引き起こされているか否かを判断するのに有用な指標の一つである肺胞表面から肺胞の毛細血管内皮細胞表面までの厚さは検索したうちの2例では肺胞上皮細胞の脱落等の死後変化のため測定できなかった。また、他の2例のSIDS事例や対照に用いた頭部損傷事例においても死後変化のため細胞小器官が膨化しており、肺胞上皮細胞や肺胞の毛細血管内皮細胞がやや腫大して認められた。このため生前の肺胞表面から肺胞の毛細血管内皮細胞表面までの厚さに比べると厚くなっていると考えられるので、SIDS事例と対照例と生前における肺水腫の換気機能への影響を断定することはやや困難であるが、SIDSの事例では厚さは約0.61および0.65μmであり、対照に用いた頭部損傷事例の厚さ(約0.63μm)に比べて、SIDS事例において有意に厚いといった成績はえられなかった。 なお、SIDS事例における肺水腫の発生原因としては、死後変化のため断言できないが、肺胞上皮細胞や肺胞の毛細血管の内皮細胞に著しい変性を認めないことから、なんらかの原因で肺の血管内の血液量が増加し、肺胞の毛細血管圧が上昇し、よって肺水腫が起きた可能性が高いと考えられる。
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