1992 Fiscal Year Annual Research Report
ラット用脳温度可変装置の開発ならびに応用-脳温度と脳循環代謝についての実験的研究-
Project/Area Number |
04670390
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井林 雪郎 九州大学, 医学部, 助手 (40213201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 健太郎 国立療養所, 福岡東病院・内科, 厚生技官
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Keywords | 脳温度 / 脳血流量 / 脳織織代謝 / 脳温度勾配 / 脳温可変装置 / 脳虚血 / 高血圧自然発症ラット |
Research Abstract |
従来、体温と脳循環代謝に関しては、低体温は脳保護作用を、高体温は脳代謝に悪影響を及ぼすとされてきた。近年、脳温度自体の脳循環代謝に及ぼす生理学的意義が注目されている。そこで我々は、体温ならびにその他の生理学的各諸量を一定にした条件で、脳温度を任意に設定しうるラット用選択的脳温度可変装置を試作した。平成4年度はこの試作装置に、1)アルミ製金属片温度の安定性の向上、2)金属片とラット(頭蓋骨)間の熱伝導効率の改善、3)二重電極の微小化(直径0.3μm)、などの改良を加え完成させた。以上より脳温度を任意に設定する際の操作性、再現性が向上した。ラットの局所脳温度は本装置により脳皮質で28.0〜38.0℃、視床で33.0〜37.0℃において任意かつ速やかな設定が可能となり、かかる設定脳温度は±0.1℃の微調節が可能であった。本装置による脳温度操作におけるラットの生理学的各諸量の有意な変動も認められなかった。以上より、この装置は本研究に極めて有用であると考えられた。次に、脳温度勾配(脳皮質および深部間の温度較差)に関する生理学的検討として、脳温度を30.0〜37.0℃に変化させた際の脳局所(大脳皮質、視床)の温度勾配および血流量を測定した。脳皮質温度を37.0、36.0、33.0、30.0℃にそれぞれ調節した際、脳温度勾配はそれぞれ0.2、0.6、2.5、4.2℃と増大した。脳皮質の血流量は脳皮質の温度を33.0、30.0℃に設定した場合、脳皮質温が36.0℃での脳血流量と比較してそれぞれ、約80、60%に有意に減少した。視床の血流量は脳皮質温を36.0℃から30.0℃に低下させた場合、脳温度で3.4℃、血流量で約20%の低下が観測された。二重電極刺入部以外の脳組織の損傷は認められなかった。以上から、脳温度は局所脳血流量を規定する因子の一つであることが示唆された。平成5年度はかかる実績をもとに脳虚血時における脳温度と脳循環代謝に関して検討していく予定である。
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