1992 Fiscal Year Annual Research Report
原発性胆汁性肝硬変の病因解明とUDCAの治療効果発現機序の解明
Project/Area Number |
04670407
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松崎 靖司 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (50209532)
|
Keywords | 原発性胆汁性肝硬変 / ursodeoxycholic acid / MHC classI / MHC classII / GVHD(GVHR) |
Research Abstract |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、近年肝機能検査の普及により本邦において、漸増している。しかしいまだ、PBCの成因と治療に関しては確立されていない。申請者は、PBCに対してursodeoxycholic acid(UDCA)が有用であることを報告した。そこで、PBCの成因とUDCAの作用機序に関しての検討を開始した。 PBCのUDCAの効果発現機序の検討として、まず細胞性免疫の関与のついてPBC患者におけるUDCA投与前後における、MHC classI,classIIの変化についての検討を行った。その結果、UDCA投与後において肝細胞におけるclassI抗原の表出は変化を認めず、胆管上皮においては表出が増加した。classII抗原の胆管上皮における表出には変化を認めなかった。PBC患者におけるUDCAの作用機序として、免疫調節作用は少ないことが推測された。 次にPBCモデルマウス実験の予備実験として、ラットを用いPBCの類似病変が出現するGVHDを作成し、MHC classI抗原の変化について検討した。PVG(RT1c)ラットの脾細胞を(DA(RA1a)xPVG)F1ラットに注入した。1群:4×10^8、2群:4×10^7、3群:4×10^6、のPVG脾細胞注入量とした。その結果、注入後約14日目に1群においてのみGVHDの出現を認めた。1群における、可溶性MHC classI抗原量(ELISAによる)は2群、3群に比し有意に増加していた。病理組織像においては、1群において非化膿性破壊性胆管炎(NSDC)が著明に出現していた。他の群は、NSDCは認められなかった。以上より、可溶性MHC classI抗原量を測定することで、GVHDの評価が可能となることが考えられた。PBCの病因を解明するにあたって、今後マウスPBCモデルにおいて可溶性MHC classI抗原量との関係を検索する有用性が示唆された。 ヒトのPBCモデルに近いものを作成することがなかなか困難である。今回は予備実験として、比較的ヒトの病態に近いモデルをラットに作成することができた。さらに、GVHD反応に可溶性MHC classI抗原量の変化が現われることも判明した。これらの成績をもとに、現在さらにヒトの病態に近いものを作成し、病態追及をしているところである。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 松崎 靖司 他: "原発性胆汁性肝硬変の治療" Current Therapy. 10. 1817-1821 (1992)
-
[Publications] Yasushi Matsuzaki et al: "Effect of long-term ursodeoxycholic acid treatment on histology,blood chemistry and MHC expression in primary biliary cirrhosis" Gastloenterology. 102. A850- (1992)
-
[Publications] Yasushi Matsuzaki et al: "Indications and limitations of Gallstone dissolution therapy" Asian Med J. 35. 341-344 (1992)
-
[Publications] 田中 直見 他: "胆汁酸製剤による胆石溶解療法と肝内胆汁うつ滞" メディチーナ. 29. 251-254 (1992)
-
[Publications] 田中 直見,他: "原発性胆汁性肝硬変のウルソデオキシコール酸療法" Therapeutic Research. 12. 3072-3075 (1991)
-
[Publications] 田中 直見,他: "原発性胆汁性肝硬変に対するウルソデオキシコール酸長期投与の肝組織改善効果とその作用機序" 肝臓. 32. 1204-1206 (1991)