1992 Fiscal Year Annual Research Report
肝発がん機構におけるフリーラジカルの役割に関する研究
Project/Area Number |
04670417
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮川 八平 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (20219728)
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Keywords | フリーラジカル / 8-ヒドロキシデオキシグアノシン / 慢性鉄負荷 / 肝発癌 |
Research Abstract |
(目的)フリーラジカルがグアニン誘導体のC-8位水酸化反応を惹起し、8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)を形成することが知られている。DNAに組み込まれた8-OHdGはin vitroおよびin vivoで読み違えをおこすことが証明され、発がん機構に重要な役割を有することが予想されている。そこで実験動物モデルとしてラットに慢性的に鉄負荷を行ない、フリーラジカルのDNA損傷に及ぼす影響につき、8-OHdGを指標として検討を行なった。(方法)慢性鉄負荷ラットは、3%カルボニル鉄で4週間飼育し、作成した。DNAを抽出しヌクレアーゼP1、アルカリフォスファターゼで消化、得られたデオキシヌクレオシドを葛西らの方法にしたがってHPLCに電気化学検出機(ECD)を接続し、高感度分析をおこなった。肝組織中のGSHはGriffithの方法にしたがい、enzymatic recycling assayにより測定した。肝組織の過酸化脂質としてマロンデアルデヒド(MDA)をBuege & Austの方法にしたがい、TBA反応物質として測定した。(成績)鉄負荷ラットにおける肝組織中の過酸化脂質は104+14nmole/g liverであり、コントロール(14+5)と比較して顕著な増加を認めた。鉄負荷ラットの肝組織中GSHはコントロールと比較して増加していた。肝組織中の8-OHdGの高感度分析をおこなったところ、コントロールでは検出限界以下であったが、鉄負荷ラットでは有意な増加を認めることができた。(討論)今回、鉄負荷ラットでは過酸化脂質が増加し、同時に肝組織中DNAに8-OHdGを証明することができた。これは鉄イオンの存在下でフェントン反応により、ヒドロキシラジカルの産生が増加し、DNA adductが産生されることによると思われる。フリーラジカルによるDNA損傷が、突然変異を惹起し、ヘモクロマトーシスにおける肝発がん機構に関与する可能性が示唆された。
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[Publications] 宮川 八平: "肝発癌におけるアルコールとHCV感染の関与に関する研究" アルコール代謝と肝. 12. 147-151 (1992)
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[Publications] Miyakawa H.: "Hepatitis C virus infection in alcoholic liver cirrhosis in Japan-Its contribution to the development of hepatocellular carcinoma" Alcohol & Alcoholism.
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[Publications] Liu J.: "Inhibition of acetaminophen hepatotoxicity by acetaldehyde in the rat" Toxicology Letters. 62. 287-292 (1992)
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[Publications] Liu J.: "Effects of.caffeine on paracetamol activation in rat and mouse liver microsomes" Xenobiotica. 22(4). 433-437 (1992)
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[Publications] Kamiyama T.: "Role of lipid peroxidation in acetaminophenーinduced hepatotoxicity:comparison with carbon tetrachloride" Toxicology Letters. 66. 7-12 (1993)
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[Publications] 神山 俊典: "四塩化炭素肝障害における過酸化脂質の関与に関する組織学的検討ーエタノールによる修飾作用について" アルコール代謝と肝. 11. 92-95 (1992)
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[Publications] 宮川 八平: "アルコール性肝障害とHCV感染 「肝臓病の臨床 トピックスと展望」 大管 俊明編" 中外医学社, 73-76 (1992)