1992 Fiscal Year Annual Research Report
胃潰瘍再生上皮における細胞間接着分子発現とH^+,K^+-ATPaseの関連
Project/Area Number |
04670439
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
杉山 敏郎 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00196768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢花 剛 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70045491)
谷内 昭 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50045324)
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Keywords | gastric ulcer / neural cell adhesion molecule / regeneration / H^+,K^+-ATPase |
Research Abstract |
胃潰瘍の治癒過程は組織欠損の再生であり、その組織再構築過程に種々の細胞間接着分子が関与していると推測されるが、どのような分子が機能しているか明らかでない。 本研究においては胃潰瘍の再生上皮における細胞間接着分子、とくにneural cell adhesion molecule (NCAM)の発現と、その発現調節機構、H^+,K^+-ATPaseとの関連について検討した。 1.ヒト正常胃粘膜上皮においてはNCAMはほとんど発現されていないが、ヒト胃潰瘍辺縁上皮では、きわめて明瞭にNCAMの発現が認められた。 NCAMの発現は潰瘍治癒期の上皮に、とくに強く認められた。 2.NCAM発現細胞は同時にproliferating cell nuclear antigen (PCNA)も発現しており、細胞回転の亢進している細胞と推定された。 3.再生上皮に発現しているNCAMはPCR法による検討からtransmembrane domainを保持していることが明らかにされ、したがって細胞間接着分子として機能していると推測された。 4.胃潰瘍再生過程におけるNCAM発現の増強はラット酢酸潰瘍モデルにおいても確認された。 5.ラット酢酸潰瘍モデルにおいて、H^+,K^+-ATPase阻害剤であるomeprazoleを5mg/kg投与することにより、再生上皮におけるNCAM発現は、さらに増強した。しかし、50mg/kg投与ラットではNCAM発現の増強は認められなかった。 6.omeprazole 5mg/kg投与ラットにおいては高ガストリン血症を認めないが、50mg/kg投与においては著しい高ガストリン血症を認めた。この事は、NCAMの発現がガストリンによるtrophic actionではなく、他の因子により調節されていることを推測させた。
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[Publications] S.Ichiyanagi: "Expression of neural cell adhesion molecule(NCAM)in the healing process of gastric ulcer" Gastroenterol Jpn. 27. 559-560 (1992)
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[Publications] 矢花 剛: "消化性潰瘍治癒過程における生長因子と細胞接着分子の役割" カレントテラピー. 11. (1993)
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[Publications] 谷内 昭: "免疫関与の消化管疾患" 医学のあゆみ. 165. (1993)
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[Publications] 矢花 剛: "H^+ポンプ阻害薬とヒスタミンH_2受容体拮抗薬の作用機序" 臨床消化器内科. 8. 9-17 (1993)