1992 Fiscal Year Annual Research Report
胆汁酸の肝細胞内輸送と胆汁うっ滞・肝細胞障害に関する研究
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04670440
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
早川 富博 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (50172995)
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Keywords | 胆汁酸 / 胆汁うっ滞 / 肝細胞障害 / Vesicle Transport / パパベリン |
Research Abstract |
1.ラット摘出肝灌流を用いた実験結果。胆汁酸のshort pulse load後の胆汁流量、胆汁酸と脂質分泌のパターンは胆汁酸の種類によって異なり、親水性のタウロコール酸(TCA)の胆汁中分泌はtailingを持つ1峰性であったが、疎水性の強いタウロケノデオキシコール酸(TCDCA)は分泌が遅延し台地状を呈した。また、単位胆汁酸当りのリン脂質の胆汁中への分泌量は胆汁酸の種類によって違い、その程度はTCDCA、TCA、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、タウロデヒドロコール酸TDHCA)の順で胆汁酸のhydrophobicityと一致していた。同様に、hydrophobicityの強い胆汁酸ほどvesicle transportの指標であるhorseradish perocxidaseの胆汁分泌を増加させた。vesicletransportを抑制する塩酸パパベリンは低濃度のTCDCA、または高濃度のTCA、TUDCAの投与時の胆汁酸排泄量を有意に抑制し、これは胆汁酸の肝における摂取の阻害でなく、肝細胞からの排泄抑制によるものであった。一方、低濃度のTCDCA、または高濃度のTCAの持続投与で胆汁うっ滞が惹起されるが、vesicle transportを促進させるグルカゴンはこれを抑制した。 2.ラット初代培養肝細胞を用いた実験結果。培養液中のLDH活性を指標に肝細胞障害を検討した結果、その強度と胆汁酸量およびその疎水性との間に相関が認められた。また、胆汁酸による肝細胞障害は細胞内の胆汁酸量に相関することが明かとなった。肝細胞からの胆汁酸排泄を抑制するパパベリンは、肝細胞内の肝汁酸量を増加させることにより、胆汁酸による肝細胞障害を増加し、逆に胆汁酸の排泄を促進するグルカゴンは肝細胞障害を有意に抑制した。以上から、胆汁酸の肝細胞内輸送にはvesicletransportが関与し、その程度は胆汁酸の疎水性とその投与量によって異なることが考えられた。
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