1992 Fiscal Year Annual Research Report
血栓誘発因子(TIA)の癌転移における役割に関する実験的研究
Project/Area Number |
04670471
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮崎 正之 九州大学, 医学部, 助手 (60167674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 洋一 九州大学, 医学部, 助手 (20172356)
村西 寿一 九州大学, 医学部, 助手 (90210054)
林 真一郎 九州大学, 医学部, 助手 (50211488)
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Keywords | 血栓誘発因子 / 実験的肺転移 / 血小板凝集 |
Research Abstract |
実験的肺転移系におけるTIAの影響を検討した。実験にはB16系メラノーマ細胞を用いた。高肺転移系であるB16F10を用いた場合,2x10^5個の細胞移入により6.4±5.9個の転移結節を形成した。TIA陽性血清100μlを細胞と同時に移入した場合,57.9±6.4個の結節を形成した(p<0.001)。同様に低肺転移系であるB16F1を移入した場合,対照群に比べTIA陽性血清投与群では結節形成が有意に増加していた。他方TIA陰性血清を投与した場合,TIA陽性群よりは有意に結節数が少なかったものの対照群に比べ有意に増加していた。これらの転移増強作用は用量依存性であった。 実験的転移系初期相における血栓の形成あるいは血小板凝集の重要性が示唆されている。そこで,TIA陽性血清のマウス血小板に及ぼす影響をin vivoにて検討した。TIA投与5分後に採血した場合,血小板数は用量依存性に減少し,TIA陽性血清100μl投与にて17.4x10^4±7.0x10^4/μlに低下した。しかし,この血小板数低下はTIA陰性血清にても観察された。更に,neuraminidase前投与により血小板数を低下させた(2.7x10^4±0.3x10^4)マウスにおける,TIA陽性血清のB16F1転移結節形成能に及ぼす影響を検討した。未処理群では,43.0±8.4個の転移結節を形成したが,neuraminidase処理群では,12.4±2.3個の結節であった(p<0.001)。 TIAはheparinを前処置することにより活性が発現しないことが既に報告されている。そこで,TIAによる転移増強作用におけるheparinの影響を検討した。B16F1/TIA/heparin群では肺転移結節数は2.8±0.5であり,B16F1/TIA群の43.0±8.4個に比べ有意に減少したが(p<0.001),B16F1単独群の1.6±0.6個とは有意差はなかった。 これらの結果,TIAは実験的転移形成を増強し,その作用発現には血液凝固が必要であり,更にその機能の一部は血小板凝集に依存しているものと推察された。
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