1993 Fiscal Year Annual Research Report
血栓誘発因子(TIA)の癌転移における役割に関する実験的研究
Project/Area Number |
04670471
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
村西 寿一 九州大学, 医学部, 助手 (90210054)
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Keywords | 血栓誘発因子 / 実験的肺転移 / 血小板凝集 |
Research Abstract |
血栓誘発因子(TIA:Thrombosis-inducing activity)は進行担癌者の血清中にしばしば認められる因子である(AM.Rev.Respi.Dis.140:778,1989)。本研究は、このTIAの癌転移に及ぼす影響を解析する目的で以下の検討を行った。(a)TIAが臨床例において癌の進展と関連している可能性について、(b)TIAの実験的肺転移系に及ぼす影響について。 結果:(a)治療開始前に血清中TIAを測定した原発性肺癌患者58例について予後を検討した。TIA陽性27例、陰性31例であり、性、年齢、病期には偏りはなかった。これらの症例の生存曲線をKaplan-Meier法で検討するとTIA陽性群は陰性群に比べ有意に生存率の低下が認められた。(b)B16系マウスメラノーマ細胞を用いた肺転移実験系におけるTIAの影響を検討した。TIA陽性血清をB16細胞と同時に移入した場合、対照群と比較して有意に肺転移結節数が増加し、これは用量依存性であった。またTIA陽性血清とHeparinを同時投与すると肺転移結節数はTIA陽性単独群と比較すると有意に減少していた。実験的肺転移形成の初期相に血栓形成あるいは血小板減少が重要であることが示されている。そこでTIAによる肺転移増強作用が、TIAの血小板への直接作用に由来する可能性を検討するために以下の実験を行った。血小板数はTIAの用量依存性に減少したが、この血小板減少効果はTIA陰性血清でも認められた。次にneuraminidase前投与により血小板数を減少させたマウスにおけるTIAの肺転移結節形成に及ぼす影響を検討した。その結果neuraminidase投与群における肺転移結節数は、未投与群に比べ有意に少なかった。 これらの結果により、血清TIAの有無は肺癌患者の予後と関連している可能性が示された。その機序の一つとして、TIAが血液凝固cascadeを介して遠離転移を増強していることが推察された。
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[Publications] Masayuki,Nakanishi.: "Thrombosis-Inducing Activity-aFactor Which Appears in Plasma of Patients with Allergic Asthma during Attack." Int.Arch.Allergy Immunol. 102. 414-416 (1993)
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[Publications] Hideo,Ogino: "Association of Thrombosis-Inducing Activity(TIA)with Fatal Hypercoagulable Complications in Patients with Lung Cancer." Chest. (in press).