1992 Fiscal Year Annual Research Report
高血圧の交感神経機能亢進における神経成長因子の関与に関する研究
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04670551
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
羽野 卓三 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90156381)
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Keywords | 神経成長因子 / 高血圧自然発症ラット / 交感神経 / 血管平滑筋細胞 / 大動脈 / 腸間膜動脈 / 腎動脈 |
Research Abstract |
高血圧自然発症ラット(SHR、岡本・青木)では、血管床の交感神経密度の増加がある。さらに、幼若SHRではノルエピネフリン(NE)遊離の亢進が認められ、高血圧発症の1要因と考えられている。神経成長因子(NGF)は、交感神経に作用する神経栄養因子であり、神経伸長作用がある。本研究ではSHRにおけるこれらの異常がNGFの増加によることを潅流標本および培養血管平滑筋を用いて明かにすることを目的とする。我々は、血管平滑筋細胞でのNGF産生、末梢交感神経終末でのNGFによるNE遊離抑制作用を示し、SHRでは血管床でのNGF含量が高く、NGFによるNE遊離抑制作用は、高血圧発症初期のSHRで低いことを明らかにした。今回は、14週齢SHRおよび対照のWistar-Kyotoラット(WKY)の大動脈培養平滑筋細胞を用い、平滑筋細胞あたりのNGF産生量を測定した。その結果、上清中のNGFは対数増殖期に一時的に増加し、その後漸減した。SHRにおけるNGF産生量は対数増殖期、静止期ともにSHRで低値であった。一方、細胞蛋白量はSHR、WKY間で差がなかった。続いて、NGF mRNAに対するprobeを用いてanti-sense cRNAを作成し、in situ hybrizationを施行した。その結果、大動脈、腸間膜動脈、腎動脈の中膜に集積が認められた。4週齢SHRの大動脈、腸間膜動脈、腎動脈の中膜において、対照のWKYと比較し、NGF産性能が亢進していることが確認できた。一方、中枢神経系では海馬、皮質に陽性細胞を認めたが、SHRとWKYとの間に差はなかった。以上、SHRの血管平滑筋からのNGF産生は、培養細胞では低下しているが、生体内では逆に亢進していた。このことは、SHRでは生体内で何等かの刺激により血管平滑筋でのNGF産生が亢進している可能性が示唆された。
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[Publications] Ueyama T.: "Reduced production of nerve growth factor in cultured vascular smooth muscle cells of spontaneously hypertensive rats" J.Hypertens. suppl.4. 155- (1992)
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[Publications] Ueyama T.: "Inhibitory effects of adrenergic transmission by nerve growth factor in the mesenteric vasculature from 12-week-old SHR." Jpn Heart J. 33(4). 536- (1992)