1992 Fiscal Year Annual Research Report
増殖因子拮抗剤を用いた経皮的冠動脈形成術後再狭窄の予防に関する研究
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04670570
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
下門 顕太郎 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 室員 (30192115)
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Keywords | 血管平滑筋 / 血管内膜肥厚 / 増殖因子 / チロジンキナーゼ阻害剤 / PTCA後再狭窄 / コルヒチン |
Research Abstract |
(I)内膜肥厚の原因である血管平滑筋の増殖は、局所で産生される増殖因子により引き起こされる。また増殖因子の作用発現にはtyrosine kinase(PTK)による、チロシンりん酸化が不可欠である。そこで、PTK阻害剤により、増殖因子の作用をブロックすることを試み、次のような知見を得た。(1)市販のgenistein,herbimycin Aおよび開発者より提供を受けたmethyl 2,5-dihydroxy cinnamate(2,5-MC)のいずれもが、血管平滑筋の増殖を阻害した。(2)これら3種の薬剤は血管平滑筋の遊走を阻害したが、protein kinase Cの阻害剤であるH7は遊走を阻害しなかった。(3)genisteinおよび2,5-MCは細胞の間質物質への接着を最高50%阻害ししたが、あらかじめ接着した細胞の遊走も抑制した。(4)これらの薬剤はレセプターの自己りん酸化のみならず、細胞骨格の形成を阻害することがわかった。Western blot分析では分子量30-40Kdの蛋白のチロシンりん酸化阻害が細胞骨格の形成阻害、細胞遊走阻害に関係することが、示唆された。 (II)ラット頚動脈内皮傷害モデルを確立し、細胞増殖遊走阻害剤であるコルヒチンの効果を検討した。コルヒチンはすでに他の細胞で報告されているように1-2μg/mlで血管平滑筋の増殖遊走を阻害した。浸透圧ポンプを用い、ヒトの極量に相当する0.2mg/Kg/dayを、傷害前日から2週間後までを3期間に区切り、5日間づつ投与し、2週間後の内膜肥厚を検討した。いずれ投与プロトコールにおいても有意の内膜肥厚抑制は認められなかった。コルヒチンにより内膜肥厚を抑制しようとする試みは、ここ数年国内外で行われているが、われわれの結果からは、通常の全身投与では平滑筋の遊走増殖を抑制する有効濃度に到達しないことが示唆された。局所に薬剤を高濃度に集積させるdrug delivery systemが必要である。
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