1992 Fiscal Year Annual Research Report
筋分化誘導因子を応用したジストロフィン異常の分子生物学的解析
Project/Area Number |
04670596
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松尾 雅文 神戸大学, 医学部, 教授 (10157266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 久英 神戸大学, 医学部, 助手 (80189258)
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Keywords | ジストロフィン / レトロポゾン / 筋ジストロフィー |
Research Abstract |
研究者らは100名以上のDuchenne型あるいはBecker型筋ジストロフィー患者のジストロフィン遺伝子の分子生物学的解析を推進してきた。そして、多くの患者で遺伝子の異常を同定してきたが、こうした患者で遺伝子異常が高頻度に発生する分子機序は全く不明で、分子生物学上の謎とされてきた。 今回、研究者らはジストロフィン八雲の症例で遺伝子異常の発生に関与する分子因子を同定することに成功した。この分子因子は、逆転写酵素などの働きを利用して遺伝子上を動き回っていると考えられているレトロポゾンであった。ジストロフィン八雲ではレトロポゾンが新たにジストロフィン遺伝子のエクソン内に挿入され、その結果ジストロフィン遺伝子が破壊されてDuchenne型筋ジストロフィーを発症していた。また、この挿入されたレトロポゾンは、塩基配列上他のレトロポゾンが有する挿入部の直接繰り返し配列を有さない、挿入部の塩基欠失を伴うなどの、転移挿入機序に関与する新たな特徴を有していた。 この成果は、レトロポゾンという遺伝情報単位が遺伝子異常の発生に関与していることをジストロフィン遺伝子で世界で初めて明らかにしたもので、疾病発症の分子因子の解明として世界中の多くの研究者から厚い注目を集めている。さらに、この成果はレトロポゾンが現在も尚動き続けていることを示す明らかな証拠を示したのみならず、分子生物学者が長く解き明かせなかったレトロポゾンの遺伝子内での転移機構の解明を大きく促進するものとして、基礎分子生物学者からも今後の研究の展開が大きく期待されている。
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[Publications] Matsuo,M,: "Partial deletion of a dystrophin gene leads to exon skipping and to loss of an intra-exon hairpin structure from the predicted mRNA precursor." Biochem.Biophys.Res.Commun.182. 495-500 (1992)
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[Publications] Kitoh,Y,: "Amplification of ten deletion-rich exons of the dystrophin gene by polymerase chain reaction shows deletions in 36 of 90 Japanese patients with Duchenne muscular dystrophy." Am.J.Med.Genet.42. 453-457 (1992)
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[Publications] Narita,N: "Insertion of 5′truncated element into exon 44 of the dystrophin gene induced skipping of the exon dusring splicing in Duchenne muscular dystrophy." Am.J.Hum.Gnet.51. A223- (1992)
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[Publications] Narita,N,: "Insertion of 5′truncated element into exon 44 of the dystrophin gene induced skipping of the exon dusring splicing in Duchenne muscular dystrophy." J.Clin.Invest.(1993)
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[Publications] 松尾 雅文: "遺伝子異常を調べる-遺伝子診断-.In:松村正実,矢崎義雄,ed.遺伝子工学の最前線.(臨床医のための実験医学シリーズ)" 羊土社, (1992)