1992 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚の炎症性疾患における熱ショック蛋白の病因論的役割とγδ型Tリンパ球の関与
Project/Area Number |
04670647
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
伊崎 誠一 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (70118206)
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Keywords | 熱ショック蛋白 / ストレス蛋白 / HSP65 / 病巣感染 / 自己免疫 / γδTリンパ球 / 抗酸菌 / らい |
Research Abstract |
細菌や生物は、高温などの環境変化に反応して熱ショック蛋白(Heat shock protein,HSP)と呼ばれる一群の蛋白質を発現する。このような反応は原核細胞から真核細胞まで普遍的に観察される。しかも誘導されるHSPは蛋白質として高い相同性を保存しているので、細菌感染の際、細菌のHSPに対する免疫は感染防御に働くが、一方で感染を受けた宿主細胞のHSPに対する免疫も発現し、このことが自己免疫性疾患発症機序の一端を説明すると考えられる。 皮膚科領域には、病巣感染、すなわちアレルギ性炎症性病変の原因が一見無関係と思われる限局した慢性微生物性感染病巣にあるという事例が頻繁に見られるが、その病態生理学的機構に関しては永く不明とされて来た。本研究で申請者は細菌感染症や一部の自己免疫性疾患との関係が注目されているHSP60ファミリーのひとつである。ヒトらい菌由来HSP65(野間口博子作製)を用い、このHSP65に対する抗体価を、ELISA法を用い、IgG、IgM、IgAの抗体各クラス別に種々の皮膚疾患で測定した。総計約200人の患者のうち、母斑、あるいは全身性疾患と関係が無いと思われる小腫瘍で来院した患者を正常群とし、他の疾患と比較すると、乾癬、掌蹠膿疱症、蕁麻疹、帯状疱疹の各患者で高率に抗HSP65抗体価の上昇を確認した。しかしながら上昇が予測されたアナフィラクトイド紫斑、その他の紅斑症ではそれほどの異常を認めなかった。 もとより流血中の抗HSP65抗体価をもって全ての病巣感染あるいは皮膚アレルギー性疾患を説明することは不可能であるが、上記の一部の疾患で抗HSP65抗体価の上昇を認めたことは興味深く、今後さらに検討を進めていくことの価値を確認した。 なおこれらの成績の一部については日本皮膚科学会東京研究地方会ならびに日本らい学会にて報告する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 伊崎 誠一: "ストレス(熱ショック)蛋白と皮膚疾患" 皮膚病診療. 14. 684-688 (1992)
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[Publications] 伊崎 誠一: "慢性肉芽腫症(白血球機能異常症)" 日本小児皮膚科学会雑誌. 11. 63-69 (1992)
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[Publications] 飯塚 万利子,伊崎 誠一,北村 啓次郎,丸山 征郎: "血管系腫瘍のマーカーとしてのトロンボモジュリンの意義" 皮膚科の臨床. 35. 411-415 (1993)
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[Publications] Izaki,S.,Hirai,A.,Yoshizawa,Y.etal.,: "Carcinosarcoma of the skin:immunohistochemical and electronmicroscopic characterization" J.Cutaneous Pathology. 20. (1993)
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[Publications] Izaki,S.,Kitamura,K.Arai,E.: "Generalized eruptive histiocytoma:report of a pediatric case" J.Dermatology. 20. (1993)
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[Publications] 伊崎 誠一: "マクロファージの機能と肉芽腫性炎症" 日本皮膚病理組織学会誌. 8. (1993)
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[Publications] 伊崎 誠一: "線溶系の新展開:細胞機能に関与する線溶系因子の役割" 皮膚の機能と線溶系因子, 79-93 (1992)
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[Publications] Yoshizawa,Y.,Sinozaki,Y.Izaki,S.,Kitamura,K.: "Current Aspects of Blood Coagulation,Fibrinolysis and Platelets" Hemostatic and fibrinolytic changes in herpeszoster, (1993)