1992 Fiscal Year Annual Research Report
加齢による中枢神経伝達機能の変化とコリン作動薬の作用に関する研究
Project/Area Number |
04670689
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
十束 支朗 山形大学, 医学部, 教授 (80009133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 正夫 山形大学, 医学部, 助手 (40187381)
川勝 忍 山形大学, 医学部, 助手 (00211178)
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Keywords | 加齢 / アセチルコリン / ムスカリン受容体 / セカンドメッセンジャー / イノシトール燐脂質代謝 |
Research Abstract |
1.ラットにおけるムスカリン性アセリチルコリン神経伝達機能の変化を検討する目的で、若年ラット(Fischer系7カ月齢)及び老齢ラット(Fischer系26カ月齢以上)において大脳皮質前頭部のカルバコール刺激性イノシトール燐脂質蓄積を検討した。その結果、カルバコール濃度が100μMでは若年ラット群864.5±12.5%、老齢ラット群555.0±59.7%、アルバコール濃度10μMではそれぞれ、412.8±12.5%、454.9±43.2%であり、とくに100μMの濃度で老齢ラット群でカルバコール刺激イノシトール燐脂質蓄積の低下を示した。これは、老齢ラットにおける後シナプスのムスカリン受容体の機能低下の存在を示唆するものと考えられる。また、この結果は、若年ラットに比して、老齢ラットでは個体差が大きい傾向があることがわかった。老化には個人差が大きいことは意義深いが、実験条件としては、ばらつきを生じ易い問題があり、破壊モデルなども併用していく必要があると考えている。 2.ムスカリン受容体(M1)刺激作用があり抗痴呆薬として期待されるピロカルピン誘導体SDZ-ENS163を1日1回、14日間連続投与し、大脳皮質のムスカリン受容体密度に及ぼす影響について検討した。その結果、対照群、3μM/kg、10μM/kg、30μM/kgの各投与群で、Bmaxはそれぞれ、337.3±5.8、380.6±8.2、352.0±4.9,342.2±4.9fmol/mg蛋白、Kdは0.0668±0.0086、0.0424±0.0013、0.0557±0.0035、0.0498±0.0059nMであり、受容体数Bmax、結合親和性Kdに対照群との差は認められなかった。以上の実験条件は、以前に報告で、カルバコール刺激イノシトール燐脂質蓄積の検討で増加が認められている濃度であるが、この濃度では受容体のダウン・レギュレーションを起こさないレベルであることが確かめられた。これは、治療薬として長期投与を考えたときに好ましい性質ではないかと考えられた。
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