1993 Fiscal Year Annual Research Report
老人におけるニオイ刺激の精神心理的影響について-マイクロカプセル暴露法による-
Project/Area Number |
04670690
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 親次 筑波大学, 社会医学系, 講師 (90162437)
|
Keywords | 老年精神医学 / ニオイ刺激 / マイクロカプセル / 記憶 / 情動 |
Research Abstract |
1)ニオイの選択、ニオイ刺激票の開発・品質評価:(1)在宅の非痴呆性老人110人を対象に、知っているニオイ、なつかしニオイ、好きなニオイなどについて質問紙調査を行い、その結果、バラ、くちなし、みかん、香水、汗、墨汁、たばこ、乳、糞便の9種のニオイが選定された。(2)これらのニオイを香料専門家の協力を得て、化学物質や濃度を考慮して、マイクロカプセル化した。これを縦5.5cm、横9.0cmの紙片の中央に印刷し、ニオイ刺激票とした。(3)ニオイ刺激票の品質を検討するためニオイ質の均一性、妥当性およびニオイ質の維持・変化(3カ月)、カプセル破壊後の時間的変化に関する実験を行った。その結果、問題のあった汗のニオイを除いて、8種のニオイ刺激票を用いて、以下の調査実験を行った。 2)調査実験:実験はニオイ刺激票作製後1〜2ヵ月後の間に行った。対象は119人の在宅老人(知的機能正常)で男性33人(62-88歳、平均73.2±6.0歳)、女性86人(60-89歳、平均72.4±5.9歳)である。一対一の面接法により、無臭の刺激票を含む9種のニオイ刺激票をクリップで擦り、ニオイを嗅いだ後に以下の質問項目に答えた。1.ニオイの親近性、2.ニオイの強度、快適度、嗜好性、3.懐かしさ、4.想起内容、5.同定されたニオイの名称である。その結果、(1)「懐かしい」と答えたものは「みかん」で53.5%、次いで「香水で41.7%を占めていた。「たばこ」、「乳」、「墨汁」では31〜36%であった。(2)「みかん」、「香水」では20〜40%の者が過去のイメージを想起し、他の6種のニオイよりも喚起力が強いことが明らかになった。
|
-
[Publications] 佐藤親次: "茨城県の一地域住民の痴呆老人についての意識調査" 社会精神医学. 3. 196-203 (1992)
-
[Publications] 佐藤親次: "ニオイと精神保健" Imago. 14. 188-192 (1993)
-
[Publications] S.Ayabe.Kanamura: "Relation between Personality Traits and Affections Evoked by Odors" Proceedings of the 26th Symposium on Taste and Smell. 285-288 (1992)
-
[Publications] C.Tanigawara: "What kind of Odor Recall Emotional Memories to the Japanese Aged?" Proceedings of the 26th Symposium on Taste and Smell. 281-284 (1992)
-
[Publications] Shinji Satoh: "Meutal Health in Family Members Living with Elders" The Japanese Journal of Psychiatry and Neurology.