1993 Fiscal Year Annual Research Report
中国帰国孤児2世(11才以下帰国者)の適応過程に関する研究
Project/Area Number |
04670693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 正彦 東京大学, 医学部(病), 講師 (30235072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箕口 雅博 東京都精神医学総合研究所, 社会精神医学部門, 研究職主事
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Keywords | 中国残留孤児 / 小児 / 移住 / 異文化適応 |
Research Abstract |
【研究の概要及び目的】この研究は中国残留帰国孤児家族として日本に移住した、11才以下の小児の日本社会への適応過程を追跡するものである。研究の目的は、小児の異文化への適応過程を明らかにし、そこに生じる精神医学的、心理学的問題点を解析すること等である。 【対象及び方法】対象は1988年、1989年に帰国した孤児家族のうち、小児19例である。対象は88年に帰国した12例の第1グループ、89年に帰国した7例の第2グループにわけ、今年度は第1グループ、12例の移住後5年目の追跡調査を行った。調査は、家族に対するアンケート、対象小児に対する訪問調査、心理テスト、担任教師へのアンケートからなる。 【本年度の研究結果及び考察】対象12例の内、1例は3年目の追跡調査時から脱落している。今年度調査で、さらに2例が転居先不明で脱落した。この内1例の父親は、都内の社会福祉協議会が主催する相談窓口で離婚、経済問題に関する相談をしていることが確認されており、家族全体が適応不全を起こしている可能性が大きい。残る9例のうち、12才男児1例が前回調査以後に登校拒否を起こしていた。この家庭では母親が病気療養を理由に中国に帰国しており、孤児である父親も不在がちとなり、家庭全体が適応上の問題を抱えていた。この男児の姉である15才の女児は、前回調査時点では過剰適応に近い適応ぶりを示していたが、今回の調査では、家族の崩壊の影響が大きな負担となっていることが窺われた。他の例は概ね良好な適応を示しており、これらの例では家族全体の適応も良好であった。5年後調査前半を終了した時点では、前回調査と比較し、良好な適応をする群と適応に問題を抱えていた群の差が、著しく拡大しているとの印象を得た。次年度は第2グループ7例に対する移住後5年目の追跡調査と、第1グループで93年度に追跡できなかった脱落例を、対象者の人権に配慮した方法で可能な限り追跡する。
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