1992 Fiscal Year Annual Research Report
分裂病者の家族機能が社会的転帰に与える影響についての計量疫学的研究-島嶼部における生活実態に関する行動生態学的分析を通して-
Project/Area Number |
04670703
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
太田 保之 長崎大学, 医療技術短期大学部, 教授 (50108304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚崎 稔 長崎大学, 医学部, 医員
藤田 長太郎 長崎大学, 医学部, 助手 (50209061)
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Keywords | 精神分裂病 / 行動生態学 / 社会適応度 / 家族機能 |
Research Abstract |
昭和63年4月1日時点において、対馬いづはら病院・上対馬病院精神科外来に受診していた分裂病者のうち、平成4年4月1日現在も継続して通院中の患者を、1)入院歴が全く無い分裂病者、2)入院歴を有する分裂病者、の2群に区分して、その生活実態と臨床経過を比較分析した結果、次のような特性が明らかになった。 A)両群分裂病者に性別分布の差は無かった。しかし、入院歴が全く無い分裂病者に比較すると、入院歴を有する分裂病者の方は教育水準が高く、失業者(男性患者)が少なく、幻覚妄想状態で急性発病する例が多く、発病より経過年数が長いという特性が存在していた。しかし、社会適応度は前者に比較しても悪くはなかった。これらの所見は、入院の有無自体が社会適応に顕著な影響を与えることを否定しており、入院を含めた精神科医療の利用方法の方がより社会適応に影響を与えていることを示唆している。そこには、対馬の社会的風土(精神障害者に対する認識と受容閾値)が関与していると考えられた。 B)入院歴が全く無い分裂病者の23%が、入院歴を有する分裂病者の17%が単身生活者であった。長崎市における分裂病者の都市生態学的研究からみると、都市構造と分裂病者の居住地域の間には一定の関係が認められるが、離島という地域の分裂病者としては、予想外に高い単身生活者の比率であった。元来家族主義的な地域にあって、家族機能の変化が分裂病者の社会適応上の生態学的分布に影響を与えていることが推測された。
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[Publications] 太田 保之 他: "都市部と離島部における分裂病者の社会適応に関する比較文化精神医学的研究" 社会精神医学. 15. 131-145 (1992)
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[Publications] 太田 保之 他: "都市生態学と精神分裂病の発生率" 日本社会精神医学会雑誌. 1. 31-52 (1993)
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[Publications] Chta Y.etal.: "Ecotogical structure and incidence rates of schizophrenia in Nagasaki City" Acta Psychiatr Scand. 86. 113-120 (1992)