1992 Fiscal Year Annual Research Report
肝温虚血後再灌流障害に対する免疫抑制剤の保護効果に関する実験的研究
Project/Area Number |
04670784
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Research Institution | Kagawa Medical School |
Principal Investigator |
前場 隆志 香川医科大学, 医学部附属病院, 講師 (60157154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 久男 香川医科大学, 医学部, 助手 (60240446)
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Keywords | 肝温虚血再灌流障害 / 肝組織高エネルギーリン酸代謝 / 核磁気共鳴法 / FK506 / ICAM‐1 |
Research Abstract |
最近、強力な免疫抑制剤であるFK506が肝再生作用および温虚血再潅流障害に対する肝保護効果が報告されている。我々は^<31>P‐MRSを用い肝組織高エネルギーリン酸代謝を虚血再潅流過程で経時的に測定することによりFK506が肝保護効果を有することを報告してきた。今回はその機序を検討するため^<31>P‐MRSによる肝組織高エネルギーリン酸代謝の評価に加え、レーザードップラーによる肝組織血流量の変化、および組織学的検討を加えた。さらに免疫組織学的にICAM‐1の発現状態も検討した。 体重200-300gのSD系雄性ラットを用い以下の検討を行った。1)日本電子社製核磁気共鳴装置JEOLGSX-270を用いた^<31>P‐MRSによる温虚血再潅流過程における肝組織高エネルギーリン酸代謝の評価。2)レーザードップラー血流計による肝組織血流量の評価。3)再潅流後30分、60分、24時間の肝の組織学的検討(HE染色、抗ICAM‐1抗体を用いた免疫組織学的検討)。4)再潅流後24時間のラットの生在率と血清GPT、m‐GOT値の測定。虚血は30分間肝十二指腸間膜をクランプすることにより行った。 ^<31>P‐MRSによる肝組織高エネルギーリン酸代謝では再潅流後5分、10分という早期よりFK506投与群で対照群と比ベ良好な回復を認め、これは肝組織血流の変化と一致した。この両者ですでに対照群と有為の差を認める再潅流後30分と60分の組織像では、対照群で小葉のZone1,Zone2領域にConjestionが強いのに対しFK506投与群ではこれが軽減されていた。免疫組織学的なICAM-1の評価では類洞内皮、肝細胞表面の発現がFK506により抑制された。再潅流後24時間のm‐GOTとGPT値の上昇も軽度で生在率も改善された。最近、虚血再潅流障害の機序として白血球の血管内皮への接着とそれを介する反応が注目されている。今回の組織像では白血球の類洞内での接着像は見られなかったが、ICAM‐1の発現がFK506により抑制されたことから、こうした免疫反応を抑制することによる再潅流後早期の肝組織血流の改善がその作用機序の1つである可能性が考えられた。 上記要旨は第42回日本消化器外科学会(平成5年7月22、23日 大阪)において発表予定である。現在当初の計画の通りKupffer細胞、好中球に関しフローサイトメトリー、免疫組織学的に検討中である。また電子顕微鏡的に今回見られた血管内皮の変化を観察する予定である。
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