1992 Fiscal Year Annual Research Report
心臓死ドナーを用いた肝移植を確立するための新たな保存法開発に関する研究
Project/Area Number |
04670798
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
小山 勇 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60178390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
見目 恭一 埼玉医科大学, 医学部, 主任
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Keywords | 温阻血肝 / 心停止後ドナー / 異所性部分肝移植 / コア-クーリング法 / 門脈動脈化 |
Research Abstract |
(1)心停止30分後に、人工心肺を用いたコア-クーリング法を用いて肝を摘出し、人工心肺を用いない従来のin situ flushing法と比べた。人工心肺を用いたコア-クーリング法において、有意に肝組織ATPレベルは高く、虚血によって下降したエネルギーチャージも摘出前に上昇させうることが判明した。また、肝組織は温度が15℃においても、わずかながら酸素消費をすることが明らかとなり、冷却する過程においても人工心肺にて酸素を投与するこの方法の利点の裏づけとなった。 (2)虚血障害のある肝において、直ちに100%機能しなくとも、生命の危険がないように、異所性部分肝移植のモデルを確立した。また、下大静脈と移植肝下大静脈の吻合後に、大腿動脈に挿入したカテーテルを通して、門脈に動脈血を流す方法を取り入れた。この方法によってレシピエントの手術時間は短縮され、かつ血流再開された肝には、つねに酸素化された動脈血が供給されることになる。 (3)雑種成犬10-15kgを用いて、人工心肺によるコア-クーリング法下に心停止30分後に肝を摘出。その肝を右葉後区域の部分肝とし、門脈動脈化による異所性肝移植を行なった。コア-クーリング法により、肝のエネルギーチャージは0.28より0.46へ上昇し、移植した直後の肝静脈ケトン体比は0.81と良好であった。移植直後には胆汁排泄は認められなかったが、4日目以後、全例に胆汁排泄が認められるようになった。また、病理学的検討においても、肝壊死は認められず、移植肝が正常に機能していると思われる所見であった。 以上の1)人工心肺を用いたコア-クーリング法.2)自己の肝を温存した異所性肝移植.3)一時的門脈動脈化の3つの方法を応用することにより、心停止後の肝を臨床的に移植に利用する可能性が示唆された。
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[Publications] 小山 勇: "心停止後ドナーを用いた臓器移植の可能性" 外科診療. 34. 915-919 (1992)
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[Publications] I.Koyama: "Developement of a reliable method for procurement of warm ischemic kidneys from non-heart-beating donors." Transplatation Boceedings. 24. 1332-1333 (1992)
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[Publications] 小山 勇: "心停止後ドナー肝を用いた異所性肝移植-臨床応用へ向けての新たな方法" 日本外科学会雑誌(臨時増刊). 94. 240-240 (1993)