Research Abstract |
研究成果 大腸鏡を用いて,内圧測定用カテーテルを挿入し大腸の収縮運動による内圧の変化を圧力トランスデューサーを介して記録した。ヒト大腸運動は,血管神経支配の相違より近位大腸と遠位大腸とでは本質的に収縮様式が異なる。すなわち,大腸の運動様式を蠕動性収縮運動と非蠕動性収縮運動とに分類すると,蠕動性収縮運動は,近位大腸に有意に認められ,非蠕動性収縮運動は,遠位大腸,特にS状結腸に有意に認められた。蠕動性収縮運動には,肛門側へ内圧波が伝播する順蠕動と頻度的には少ないが,口側へ内圧波が伝播する逆蠕動運動がある。近位大腸の内容は,半流動態であり,順蠕動,逆蠕動により容易に腸内容の移動が起こり,さらに近位大腸で混和撹拌され大腸粘膜による再吸収がすすむものと理解される。一方,遠位大腸における非蠕動運動は,分節運動ともよばれ,急速な大腸内容の直腸内流入を阻止しているものと考えられた。このような運動様式により,日常の生理的な排便がコントロールされている。しかし,不眠などのストレスのかかった状態下では,この運動様式のバランスが失われ,下痢,便秘という症状が出現する。この現象を反映している疾患として,過敏性大腸炎があげられる。これと似たような疾患として若年女性の難治性便秘症を経験し,大腸内圧検査,直腸肛門反射を検討し,これを手術的に治癒せしめた。大腸内圧検査の結果は,著しい遠位大腸の運動低下が認められたが,直腸肛門機能および小腸運動は正常に保たれていた。この症例にたいして,大腸亜全摘,上行結腸直腸吻合術を施行した。このような症例を扱うのには,どの部の機能障害が起こっているのか内圧検査を行い的確な診断が必要であるものと考えられた。
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