1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04670921
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村川 雅洋 京都大学, 医学部, 助手 (90182112)
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Keywords | 全身麻酔薬 / ペントバルビタール / イソフルレン / ケタミン / 神経伝達物質 / アセチルコリン / グルタミン酸 / ドパミン |
Research Abstract |
全身麻酔薬は、その中枢神経電気活動に及ぼす作用により、用量依存性に神経細胞活動を抑制する抑制性麻酔薬(バルビツレート、イソフルレン等)と、臨床使用濃度で神経細胞活動を促進する興奮性麻酔薬(ケタミン、笑気等)に分類される。一方、中枢神経における伝達物質には、興奮性であるグルタミン酸、ドパミン、アセチルコリン等と、抑制性であるガンマ-アミノ酪酸、グリシン等とがある。本研究の目的は、各種麻酔薬が興奮性及び抑制性のそれぞれの神経伝達物質の動態にどのような作用を及ぼすかを明かにし、麻酔薬の中枢神経系のニューロン活動に対する作用と各種神経伝達物質の放出量との間にどのような関係があるかを検討することである。 生体脳での神経伝達物質放出量の測定を脳内微小透析法によって行った。即ち、成熟雄ラットを用いて、生体脳内の線状体に、微小透析用プローベを挿入し、リンゲル液で潅流を行い、細胞外液を採取した。採取した細胞外液中の、グルタミン酸、アセチルコリン、ドパミンの濃度を高速液体クロマトグラフを用いて測定した。各種麻酔薬を投与し、麻酔薬投与前と麻酔中の細胞外液中のグルタミン酸、アセチルコリン、ドパミンの濃度を比較し、麻酔薬の作用を検討した。 抑制性麻酔薬であるバルビツレート(ペントバルビタール)は、グルタミン酸、ドパミンの放出量には影響を及ぼさなかったが、アセチルコリンの放出を抑制した。また、抑制性麻酔薬であるイソフルレンは、用量依存性にアセチルコリンの放出を抑制した。一方、興奮性麻酔薬であるケタミンは、アセチルコリンの放出量には影響を及ぼさなかった。以上の結果より、抑制性麻酔薬の麻酔作用には、興奮性神経伝達物質アセチルコリンの放出抑制が関与していることが示唆された。
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