1993 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト胎児発育の制御に関わる胎児胎盤循環動態および細胞成長因子の意義に関する研究
Project/Area Number |
04671006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前田 博敬 九州大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (20199631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 秀昭 九州大学, 医学部, 助手 (70253408)
月森 清巳 九州大学, 医学部, 助手
佐藤 昌司 九州大学, 医学部, 講師 (00225947)
小柳 孝司 九州大学, 医学部, 助教授 (30136452)
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Keywords | ヒト胎児 / 子宮内発育遅延 / 胎盤循環 / 細胞増殖能 / 細胞生物学 / 超音波音響学 |
Research Abstract |
.ヒト胎児における胎児胎盤循環の調節機構に関する検討 子宮内発育遅延(IUGR)の胎児、新生児を対象として、微小循環として捉えた胎児胎盤循環動態を、1)細胞生物学的:血管内皮細胞機能および関連物質との相互作用、2)超音波学的:in vivoにおける子宮-胎盤-胎児系の循環動態の2点から検討を加えた。対照は同一妊娠週数で正常発育の胎児・新生児を用いた。1)血管内皮細胞機能および関連物質との相互作用に関する検討は、血管内皮細胞のPG12およびエンドセリンの産生能を指標として用いた。PG12およびエンドセリン産生量はELISA法を用いて測定した。血管内皮細胞は臍静脈から分離・培養した。その結果、IUGR胎児では正常発育胎児に比し、臍帯血管内皮細胞でのPG12およびエンドセリンの産生能の低下を認めた。このことから、IUGR胎児の胎児胎盤循環動態には血管内皮細胞の産生する血管作動性物質が関与する可能性が示唆された。2)in vivoにおける子宮-胎盤-胎児系の循環動態の検討は、超音波ドプラ法による臍動脈・中大脳動脈の血流計測を用いた。その結果、IUGR胎児では正常発育胎児に比し、臍動脈のResistance Index(RI)値の上昇および中大脳動脈のRI値の低下を認めた。このことから、IUGR胎児では胎盤血管抵抗の上昇と脳血管抵抗の減少が存在することが示唆された。 .ヒト胎児における発育および成熟制御機構の細胞生物学的検討 子宮内発育遅延(IUGR)の胎児・新生児を対象として、胎盤血管床の形成に関して細胞生物学的に検討を加えた。対照は同一妊娠週数で正常発育の胎児・新生児を用いた。胎盤血管床の形成の検討には、胎児血清が血管内皮細胞に及ぼす増殖能および傷害性の二つの指標を用いた。細胞増殖能および細胞傷害性の尺度には、各々3H-チミジン取り込み能と51Cr解離能を用いた。血管内皮細胞は母児に合併症を認めない臍静脈から分離・培養した。その結果、IUGR胎児では正常発育胎児に比し、3H-チミジン取り込み能の低下を認めた。一方、妊娠中毒症に伴うIUGR胎児では、母体合併症を伴わないIUGR胎児および正常発育胎児に比し、51Cr解離能の上昇を認めた。このことから、妊娠中毒症に伴うIUGR胎児には血管内皮細胞傷害因子、母体合併症を伴わないIUGR胎児には血管内皮細胞増殖抑制因子が存在することが示唆された。
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