1992 Fiscal Year Annual Research Report
染色体特異的cDNAを用いた子宮内膜癌抑制遺伝子の単離
Project/Area Number |
04671009
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 秀則 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (60214392)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和気 徳夫 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (50158606)
宮本 新吾 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (40209945)
|
Keywords | A9 / ヒト1番染色体 / cDNA発現ライブラリー / suicide selection / マイロファージ遊走阻止因子 / Porin Thermoregulatory Protein |
Research Abstract |
(1)正常ヒト1番染色体が微小核融合により導入されたマウスA9線維芽細胞と、親株のA9細胞のcDNAライブラリーを発現ベクターであるpcDNA1を用いて作製した。それぞれのライブラリーから、R408ヘルパーファージの感染により一本鎖DNAを回収した。親株A9cDNAライブラリー由来の一本鎖をビオチン化し、両者の間でハイブリダイゼーションを行った。続いてavidinを添加し、フェノール抽出により、サブトラクションを行い、ヒト1番染色体特異的cDNAライブラリー(SL1)を得た。ライブラリースケールは5×10^3であった。このライブラリーをアイソトープ標識し、マウスおよびヒトゲノムDNAに対しサザンブロットを行った結果、ヒトゲノムDNAに対してのみシグナルが得られた。 (2)SL1をリン酸カルシウム法によりHHUAにトランスフェクトし、BrdUとHochst33258添加後、UV照射を行い、増殖の極めて抑制された細胞クローンを得る。これらの細胞より(1)特に、cDNAがtandemに組み込まれている場合を想定し、ベクターのone cut enzymeであるBamHIにて細胞DNAを消化し、続いてライゲショーンを行う。これをコンピテントセル(MC1061P3)に導入する、(2)ベクターのcDNAクローニング部位の両端にはSP6およびT7プロモーターが配置されているため、両者のプライマーを用いて、細胞DNAのPCRを行った。 (3)2の方法により現在3つのcDNAクローン892(0.5kb),B2(0.8kb),N16(1.5kb)が得られている。これらのクローンについて塩基配列を決定し、既知の遺伝子との相同性を検索した。その結果892はサイトカインの一種であるヒトマクロファージ遊走阻止因子(MIF)と高い相同性を示すことが明らかとなった。B2は既知の遺伝子の塩基配列の中では高い相同性をもつものは見出せなかった。しかし、蛋白コード領域を決定し、アミノ酸レベルでの相同性を検討したところ、N末側行100アミノ酸残基が転写調節因子であるPorin Thermoregulatory Protein(PTR)に類似していることが明らかとなった。N16は既知の遺伝子、蛋白質の中に相同性の高いものは見られなかった。 (4)現在までに得られたクローンのうち892は子宮内膜癌細胞株であるHHUAおよびIshikawa株で発現の増大が観察されている。また892をpSV2neoとともにHHUAに再度トランスフェクトするとコントロールに比しsurvival colonyの減少がみられた。内膜癌細胞株での発現の増大が一義的なものであるか否か、そうだとすればいかなる機構によるものかを、正常内膜とHHUAでのシークエンスの比較、内膜癌症例のin vivo材料を用いた検討を継続している。B2では、子宮内膜癌細胞株で高率に発現の消失が見られている(7株中3株)。また発現のあるものの中でもSSCPのパターンも正常に比較し、変化しており、この変化が、point mutation等によるものなのか否かを現在検討中である。またB2はPTRと類似したドメインをもつことより、正常子宮内膜の増殖を転写調節因子としての機能を介して調節しており、この正常機能の破綻が子宮内膜癌化過程に関与している可能性が示唆された。N16に関しては現在塩基配列の解析を進めている。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] H.Kato,J.Nishida,T.Honda,Y.Fujinaga,K.Fujinaga,N.Wake: "Chromosome alterations contributed to neoplastic progression of transformed rat embryonal fibroblasts." Cancer Genetics and Cytogeinetics. 58. 39-47 (1992)
-
[Publications] T.Imamura,T.Arima,H.Kato,S.Miyamoto,T.Sasazuki,N.Wake: "Chromosomal deletions and K-ras gene mutations in human endometrial carcinomas." International Journal of Cancer. 51. 47-52 (1992)
-
[Publications] T.Honda,H.Kato,T.Gima,J.Nishida,M.Sasaki,T.Imamura,N.Wake: "Involvement of p53 gene mutations in human endometrial carcinomas." Intemational Journal of Cancer. 54. 1-5 (1993)