1992 Fiscal Year Annual Research Report
無重力状態における半規管の活動性と温度眼振反応のメカニズムに関する実験的研究
Project/Area Number |
04671042
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 衛 広島大学, 医学部, 助教授 (80116607)
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Keywords | 温度眼振 / 摘出半規管 / 膜迷路 / 活動電位 / 膨大部神経 / 内リンパ流動 / 内耳毒性薬剤 |
Research Abstract |
温度眼振反応の基本的メカニズムを解明するため、本年度は、ウシガエル摘出半規管を用い、以下の2種類の実験を行った。まず、温度刺激が内リンパ流動に対流をおこし、これが半規管感覚上皮を刺激することから、内リンパ流動がいかに他の半規管に伝達されるかを検索した。すなわち、ウシガエル迷路を一塊として摘出し、前半規管膨大部より挿入したポリエチレン管を通して機械的内リンパ流動刺激を与えた。膨大部神経活動電位の記録は前半規管と後半規管とから行った。反膨大部刺激を与えると、前半規管神経からはスパイク数400-500/秒の良好な活動電位が記録された。同時に後半規管神経からは、抑制性の反応が得られた。向膨大部刺激では、これと逆に前半規管神経から抑制性、後半規管神経からは興奮性の反応が見られた。刺激量を大きくすると、これに応じて前半規管、後半規管の反応がともに増大するのが観察された。これは、明らかに前半規管に加えた内リンパ流動が卵形嚢を経由して後半規管に効率よく伝達されたためと考えられた。ただし、後半規管からの反応は前半規管からのそれより小さく,1/2から1/3程度であった。また、両者の反応潜時の差については今回の解析では明らかでなかった。以上より、膜迷路のある部分に加えられたリンパ流動はその半規管のクプラの偏位を起こし、さらに内リンパ腔全体に及んで、各受容器から反応をひき起こし、温度眼振の発現に寄与するものと考えられた。第2の実験として、内外リンパ腔に内耳毒性薬剤であるトブラシンを加えて半規管の活動性を検討した。その結果、外リンパ腔に薬剤を作用させた時のみに反応の低下が見られた。このことより、薬剤は従来知られている有毛面からのみならず、外リンパ側からも受容器の活動に作用を及ぼすものと考えられた。
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