1993 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部扁平上皮癌における癌転移抑制遺伝子の分析とその臨床応用
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04671059
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
石戸谷 淳一 国立国際医療センター研究所, 代謝疾患研究部, 研究員 (00191875)
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Keywords | 頭頸部 / 扁平上皮癌 / 癌転移抑制遺伝子 / nm23 |
Research Abstract |
癌転移抑制遺伝子nm23は正常細胞にも存在し、本研究においてはその発現の減弱を調べる事が必要で、免疫組織染色で再現性のある結果を得るには細心な実験が必要である。平成4年度には、preliminaryな免疫組織化学的研究を行ったが、種々の問題点が明らかになった。そこで、平成5年度はそれらについて技術的に若干の変更を行い、さらに多くの症例について詳細に検討した。検討に用いたnm23に対する抗体は、昨年度と同様、東京都老人総合研究所の木村博士より供与されたものである。 正常上皮でのnm23の発現は、上皮基底層に強くみられ有棘層、表層になるにしたがい減弱していた。個々の頭頸部扁平上皮癌組織の染色程度は様々であり、正常上皮と同様に強い染色がみられる例からまったく染色のみられない例まであった。これらの染色性の違いとリンパ節転移との関係を調べると、染色性の減弱している例でリンパ節転移が多い傾向がみられたが、はっきりとした有意な相違ではなかった。同一の癌組織でも、染色性の違いがみられた。H.E.染色の結果と比較すると、染色性の違いは組織分化度と関係があるようであった。そこで、頭頸部扁平上皮癌の組織分化度の指標になるとされる、cytokeratin1,13,19の免疫染色を同一の連続切片を用いて行った。すると、nm23の染色性はcytokeratin13の染色性と良く相関した。すなわち、nm23の発現は組織分化度に関係していると考えられた。 上述の様に、ひとつの癌組織の切片の中でもnm23発現のheterogeneityがみられた事から、nm23発現の解析は細胞または細胞集団ごとにしなければならず、Northern HybridizationやWestern blotなどの生化学的手法は適当でないと考えられた。 nm23の発現が組織分化度と関連があるという知見は、他の部位の癌の検討でも今だ報告がなく、非常に興味が持たれる。次年度はさらに詳細な検討を加え、nm23からみた頭頸部扁平上皮癌のheterogeneityや癌の細胞特性を調べ、予後診断など臨床応用できる知見を得たいと考えている。
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