1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04671109
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小宮山 一雄 日本大学, 歯学部, 助教授 (00120452)
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Keywords | B型肝炎ウイルス / C型肝炎ウイルス / 唾液 / PCR |
Research Abstract |
今日、ウイルス性肝炎は歯科診療を遂行する上で、留意しなくてはならない重要な感染症に一つに挙げられている。近年、輸血液の詳細な検索が行なわれるようになり、一時より患者数の減少傾向がみられるようになったが、反面感染経路を特定しえない患者が相当数いることが明らかにされた。我々はこれらの感染経路として、唾液に注目し、唾液中のウイルス遺伝子を補足することで証明することを行なった。 本年度は慢性肝炎、肝硬変、肝癌患者計139名からそれぞれ全唾液を採取した。この患者唾液よりB型肝炎ウイルス検出の為にDNAを、C型肝炎ウイルス検出のためにRNAを抽出してそれぞれのウイルス遺伝子に相補的なプライマーを用い、Polymerase chain reactionおよびサザンブロットハイブリダイゼーション法により、各ウイルス遺伝子を直接的に証明を行なった。B型感染者の唾液からは32、7%にウイルス遺伝子が検出され、そのほとんどは肝炎患者であり肝癌患者からは検出されなかった。血清のHBc抗体価との検討で、抗体が出来ている患者からもウイルスが補足されることがあった。さらに剖検例の検討からウイルスの唾液への出現は、唾液腺を介している可能性が示唆された。C型ウイルス感染者の唾液からは、より高率に65、2%ウイルス遺伝子が検出された。これらの患者では血清レベルの検索で全例ウイルス陽性を確認し、さらに唾液中の潜血反応は75%が陽性であった。C型遺伝子は肝炎患者のみならず、肝硬変、肝癌といった長期感染者の唾液からも検出され、持続的にウイルスが唾液に出現していることが明かとなった。以上の結果は、肝炎ウイルス感染対策が立ち遅れている歯科において、これを推進させる現実的かつ有為な情報であると考える。
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