Research Abstract |
1.歯科用アマルガムが子孫の臓器中水銀濃度に及ぼす影響について (方法)実験には生後11週令,妊娠1日目のSD系雌性ラットを使用し,5匹を実験群,2匹を対照群とした。実験群には上顎の4歯咬合面に高銅型アマルガムを充填した。母親は出産後8週間,子供は雄,雌をそれぞれ2匹づつ10週間飼育した。飼育後,麻酔下で右心耳から放血屠殺すると同時に,左心房から生理食塩液を注入し臓器の還流を行なった。還流後,母親と子供から脳,肝臓,腎臓および脾臓を摘出,血液は臓器の還流前に右心耳から注射器で採取した。総水銀の測定は還元気化原子吸光法で行なった。測定試料の灰化は硝酸-過塩素酸(4:1)で100℃/1時間,さらに140℃/3時間行なった。 (結果)母親の場合,実験群は対照群と比較して各臓器とも有意に高い水銀濃度を示した。子供の臓器および血液中水銀濃度は対照群よりも多い傾向を示したが有意な差異は認められなかった。 2.水銀の胎児への移行とその化学型について (方法)実験には生後11週令の確定妊娠1日目のSD系雌性ラットを使用し,8匹を実験群,4匹を対照群とした。実験群には上顎の1歯咬合面に高銅型アマルガムを充填した。妊娠20日目に麻酔下で右心耳から放血屠殺すると同時に,左心房から生理食塩液を注入し臓器の還流を行なった。還流後,母親の脳,肝臓,腎臓,胎盤,および胎児の脳,肝臓,腎臓,血液を採取し総水銀を測定した。母親の血液は還流前に右心耳から採取し、全血および血漿中の水銀濃度を測定,血球中の水銀濃度はヘマトクリット値から求めた。 (結果および考察)母親の場合,実験群は対照群と比較して各臓器とも有意に高い水銀濃度を示した。胎児の場合,実験群の脳および肝臓は対照群と比較して有意に高い水銀濃度を示したが,腎臓は対照群と同程度であった。母親の血液に関して,実験群の全血,血漿および血球中の水銀濃度は対照群と比較して有意に高い値を示したが,血漿/血球比は対照群で56.9±6.5,実験群では22.0±4.8であり実験群が有意に低い値を示した。母親の胎盤および血液,さらに胎児の結果から,アマルガムからの水銀は金属水銀および無機水銀イオンとして胎児に取り込まれると推測される。
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