1992 Fiscal Year Annual Research Report
植物の生体防御システムにおけるエリシター物質の解明
Project/Area Number |
04671302
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
竹田 忠紘 名古屋市立大学, 薬学部, 助教授 (90106253)
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Keywords | エリシター / ファイトアレキシン / 糖タンパク質 / 糖ペプチド / 糖鎖 / グリコシド結合 / 三糖ジペプチド / 生体防御システム |
Research Abstract |
自然界では、植物の周囲に多くの種類の病原微生物が存在しており、植物は絶えずそれらの侵入を受けている。しかし大多数の病原菌に対して植物は抵抗反応を示し、それらの侵入から身を守っている。感染行動を阻害する因子として、「静的抵抗性」と「動的抵抗性」とに大別できる。後者においては外敵の侵入により始めて動き出す防御機構を意味し動員される生体防御物質は植物の種類によって異なり、低分子の抗菌性物質(ファイトアレキシン)、プロテアーゼインヒビター、リグニン、などが知られている。植物に作用してこのような抵抗性反応を誘導する物質をエリシターといい、生物由来のエリシターとして最も良く知られているのは、病原菌及び植物細胞表層由来の多糖及びその断片であり、エリシター関連の研究は、植物の抵抗反応機構の解明、病害防除への応用として注目されている。病原糸状菌の一種である疫病菌Myoospherella pinodesに対するエンドウの抵抗性発現に一義的な役割を果たすファイトアレキシンはピサチンであり、松原等はピサチン誘導の為に必須の役割を持つエリシターを糸状菌の分生芽胞から発芽中に媒介体に分泌される糖タンパクとして見出した。本物質は分子量130万、糖とアミノ酸の比は1:2.8からなる糖タンパク質で糖鎖部分はβ-Glc-(1-6)-α-Man-(1-6)-α-Manの三糖よりなり、タンパクとセリンを介してO-グリコシド結合をしていることが判明している。我々は、本物質の断片にもエリシター活性を有する可能性を想定して、活性部位の最小単位を合成面からアプローチする為にモデル化合物の合成を試み、三糖セリン及び三糖ジペプチドの合成を行った。三糖セリンは活性は原体に比し低値を示したが、少なくとも活性は維持されており、今後更にペプチド鎖の延長或いは分岐鎖も含め、構造-活性相関を検討し、植物の生体防御システムの解明に取り組みたい。
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