Research Abstract |
ヒト培養血管内皮細胞の機能発現に及ぼす細胞外基質の影響を検討した。20%牛胎児血清存在下で,プラスチックディッシュを対照とした時,細胞接着に対しては,ラミニン,V型コラーゲンおよびエラスチンは抑制した。フィブロネクチン,I,III,およびIV型コラーゲンはほとんど影響しなかった。細胞増殖に対しては,フィブロネクチンとI型コラーゲンは促進したが,エラスチンは内皮細胞の増殖をも抑制した。ところが,V型コラーゲンを基質として用いた時,内皮細胞は培養時間の経過と共に基質面から剥離し,細胞増殖は観察されなかった。 しかし,これらの結果は,血清中に存在するフィブロネクチンや増殖因子の影響を受けている可能性がある。そこで,これらの影響を避けるために低血清条件下(1%)で検討した。フィブロネクチンやI型コラーゲン上では,ヒト内皮細胞は0.5-1時間後には接着,伸展し,24時間後には高い接着率(75-78%)を示した。その後5日目まで直線的に増殖した。一方,V型コラーゲン上の内皮細胞は,一時的には接着、進展するが,次第に基質面から離脱し,24時間後の接着率は41%であった。これに対し,ヒト血管平滑筋細胞は何れの基質上でもよく接着,進展し,増殖した。 次に,F-アクチン線維および接着斑の形成を調べた。フィブロネクチンやI型コラーゲン上の内皮細胞は,24時間後にはF-アクチン線維を形成し,接着斑の形成部位にβ1インテグリンを集合していることが観察された。しかし,V型コラーゲン上の内皮細胞は,一時的には基質面に接着するが,24時間後に細胞内骨格が再構成されず,接着斑も形成されず,さらにβ1インテグリンも発現できないために,基質面から剥離する。しかし,離脱した細胞をI型コラーゲン上で再培養すると接着し,増殖することなどが判明した。
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