1992 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺ホルモン不応症の発症機序に関する研究:患者皮膚線維芽細胞を用いた検討
Project/Area Number |
04671470
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村田 善晴 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (80174308)
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Research Abstract |
今回の検討には、臨床的に甲状腺ホルモン不応症(GRTH)と診断され、甲状腺ホルモン核受容体(NTR)遺伝子の異常が明らかにされている、2家系4症例の患者から得られた線維芽細胞を用いた。NTR遺伝子(c-erb A遺伝子)にはα、βの2つの遺伝子が存在することが知られているが、今回検討した一家系(A家系、2症例)では、患者のβ遺伝子の対立遺伝子の一方に点突然変異が存在し(即ちheterozygous)、他の一家系(B家系、2症例)では対立遺伝子の何れにもβ遺伝子が欠失していることが、既に示されている。本研究では、これらの線維芽細胞で、活性型NTRをコードするmRNA即ち、c-erb Aα_1 mRNA及びc-erb Aβ_1がどの様に発現しているかを、Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction(RT-PCR)法を用いて検討した。その結果、β遺伝子に点突然変異を有するA家系の患者の線維芽細胞では、α_1及びβ_1 mRNAが健常人の線維芽細胞と同様に発現していることが示された。一方、β遺伝子の欠損するB家系の患者の線維芽細胞では、α_1 mRNAは健常人の線維芽細胞と同様に発現していたものの、β_1 mRNAの発現は全く認められなかった。また、点突然変異をもつβ_1 mRANのみを増幅できるよう調整したプライマーを用いるAllele Specific Amplification法で検討した結果、A家系の患者では変異遺伝子と正常遺伝子が同程度に発現していることが示された。以上の結果から、A家系の患者の線維芽細胞では変異β遺伝子と正常β遺伝子が同程度に発現し、α遺伝子の発現抑制、またはover expressionは認められないことが明らかとなった。同様に、B家系の患者の線維芽細胞でもβ_1 mRANの発現は全く認められないものの、α遺伝子の発現は健常人の線維芽細胞と同程度にであることが示された。
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[Publications] HAYASHI Yoshitaka: "The relative expression of mutant and normal thyroid hormone receptor genes in patients with resistance to thyroid hormone determined by estimation of thir specific messenger ribonucleic acid products." Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 76(1). 64-69 (1993)
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[Publications] 村田 善晴: "ヒト皮膚線維芽細胞に於ける甲状腺ホルモン作用: スフェロイド培養を用いた検討" 名古屋大学環境医学研究所年報. 44. (1993)