1992 Fiscal Year Annual Research Report
X線複結晶回折法による多孔質シリコン薄層の格子ひずみ評価
Project/Area Number |
04680054
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
入戸野 修 東京工業大学, 工学部, 教授 (40016564)
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Keywords | 陽極化成 / シリコン / 多孔質シリコン / X線回折 / モデイク性 / 格子ひずみ / 可視光発光 / 結晶性 |
Research Abstract |
CZ・シリコン単結晶上に陽極化成法で作製した多孔質シリコン層がレーザ光照射で赤色の発光をすることが報告され,申請者らも実際にこの発光現象を確認した.この発光現象は残留シリコンの量子サイズ効果によると推測されているが,格子ひずみによる効果も考えられ,実験的にはどのような機構によるものか未だ検証されていない.本研究では,十分に規定された強力なX線束を用いた複結晶回折法により,多孔質シリコン層の結晶性を調べ発光特性との関係について検討した.さらに,高分解能電子顕微鏡の結果を参照し,多孔質シリコンの微細構造および形態,発光効率,結晶性と格子ひずみの関係について考察した. 本研究で得られた主な結果は以下の通りである.(1)陽極化成条件により,多孔質シリコン薄層の格子定数と細孔構造(樹状構造)は著しく異なる.(2)基板から剥離すると基板による拘束を免れるため多孔質シリコン薄層は全体でひずみを緩和しX線の回折曲線の半値幅は著しく広がり,樹状構造が破壊されモザイク構造となると解釈された.(3)この結果から多孔度の高い多孔質シリコン層では,在留シリコン部は微細粒子の集合した一種のモザイク構造となることで格子ひずみを緩和していると解釈された.(4)作製条件および作製後の処理条件を変えた試料について,レーザ照射とその発光特性を調べ,結晶学的完全性および格子ひずみが大きい微細粒子からなる部分が著しい発光特性を示すことがわかった.この点は,高分解能走査型および透過型電子顕微鏡観察によっても確認された.可視光発光に関与している部分は,数nm程度の結晶性の悪いあるいは格子ひずみの大きい微粒子状になっている部分である可能性が高いことが示された.今後は,X線小角散乱法を併用した構造評価法で,具体的にどのような形態が関与しているか調べる計画である.
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[Publications] 竹本 邦子,入戸野 修: "多孔質シリコンの結晶性と発光特性" 結晶工学シンポジウム. 9. 1-8 (1992)
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[Publications] 竹本 邦子,中村 吉男,入戸野 修: "n型縮退基板上に作製された多孔質シリコン層の微細構造評価" 応用電子物性分科会研究報告集. 446. 36-39 (1992)
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[Publications] K.Takemoto,Y.Nakamura O,Nittono: "Microstructure and Crystallinity of Luminescent Porous Silicon studied Diffraction Techniques" Abstracts of Asian Crystallographic Association,As CA '92. 15Q-10 (1992)
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[Publications] K.Takemoto,H.Yamanashi,O.Nittono,H.Sugiyama and K.Hamamura: "Microtexture and Lattice Distortion of P-type Porous Silicon Layers produced by Electrochemical Anodization" MRS-Japan,Advanced Materials. (1993)