1992 Fiscal Year Annual Research Report
食品の低温保存における低温菌の増殖特性に関する酵素化学的研究
Project/Area Number |
04680070
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
横井川 久己男 奈良女子大学, 家政学部, 講師 (60230637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 弘康 奈良女子大学, 家政学部, 教授 (80026525)
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Keywords | 低温菌 / 低温保存 / 低温菌酵素 / アミノ酸異性化酵素 |
Research Abstract |
種々の食品から0℃で増殖する低温菌を約100株単離し、それらの増殖温度域、増殖速度を調べた。増殖温度の上限は、いずれも20-34℃であり、このことからこれらはすべて好冷菌ではなく、低温菌であることが判明した。また、増殖の倍加時間は、5-30時間であった。高頻度で検出され、かつ最も早い増殖速度を示す低温菌は、Pseudomonsas属の細菌であった。さらに詳細な菌学的同定により、それらの低温菌の中で最も増殖の早い低温菌をPseudomonas fluorescens TM5-2株と同定した。また、単離した細菌の全てにアラニンラセマーゼ活性が検出され、いずれも37℃以上の温度で急速に失活する熱に不安定な酵素であり、低温菌の増殖温度と正の相関性が見られた。 分離した低温菌Pseudomonas fluorescens TM5-2から、アラニンラセマーゼの精製を行った。各種クロマトグラフィーによって精製収率17%で電気泳動的に均一な酵素標品を調製した。本酵素の分子量は約76,000で同一サブユニット2個からなる二量体構造を有し、活性に必須な補酵素ピリドキサール5′-リン酸をサブユニット当たり一個含んでいた。本酵素のアミノ酸組成は、常温菌や好熱菌のアラニンラセマーゼとバリン含量において大きな違いが見られた。低温での活性発現は、常温菌や好熱菌由来酵素には見られず、低温菌酵素に特徴的であった。また、本酵素は30℃以上の温度で急速に失活し、菌の増殖上限温度(34℃)と近い値を示した。 低温菌由来アラニンラセマーゼは、熱に不安定であるばかりか、変性剤や界面活性剤によっても低濃度で著しく変性不活化された。特に界面活性剤であるSDSによる阻害は著しく、0.1%でほぼ完全に活性を阻害し、この濃度では菌の生育も同様に抑制された。また、アルカリに対しては安定であったが、酸に対してはきわめて不安定であった。
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Research Products
(1 results)