1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04680127
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
笠井 達哉 広島大学, 総合科学部, 教授 (60112702)
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Keywords | 磁気刺激 / 随意運動 / ヒト / 筋電図 / 大脳運動野 |
Research Abstract |
平成4年度は以下の観点から実験・研究を遂行した。すなわち、上肢の随意筋収縮(手首の伸展・屈曲運動)の強さを段階的に変化させ、その筋収縮に関与する複数の筋から、頭部を磁気刺激することから得られるmotor evoked potentials(MEPs)を導出した。この時のMEP振福と潜時の変化が、筋収縮の違いに対応してどのような変化を示すかをシステムマテックに解析を行った。すなわち、主動筋と拮抗筋の興奮性の変化を反映する指標である錐体路細胞と脊髄運動細胞のMEP振幅と潜時の変化について検討した。 その結果、MEPの振幅と潜時の変化は、随意筋収縮力が強くなればなるほど、振幅は増大し潜時は短縮した。この結果はすでにMillsら(1986)によって報告されている結果と同じであり、筋出力の増大に伴う錐体路細胞とそれを受けて立つ脊髄運動細胞の質的違い(大きさの原理)を反映する結果であった。しかしながら、拮抗筋抑制は著明には観察されなかった。すなわち、どのような条件下でも、拮抗筋のMEPはその振幅が減少することは無かった。この結果の説明として、2つの可能性が考えられた。1つは、筋電図記録では観察できないが、このような運動では筋収縮に伴って必ず拮抗筋のco‐contractionが起ってしまうことによる可能性である。これは、手首の筋収縮には直接関与しない上腕二頭筋のMEPが、筋電図記録上では変化は認められなかったにもかかわらず、MEP振幅は筋収縮の増大に伴って増大した。この事実は、この可能性を支持する結果と考えられる。もう1つの可能性は、脊髄反射法とMEP法の神経生理学的機序の違いによる可能性である。この点に関してはより詳細な検討が必要である。
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