1992 Fiscal Year Annual Research Report
徐冷モンテ・カルロ法によるペプチドの立体構造予測とその実験的検証
Project/Area Number |
04680164
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中沢 隆 奈良女子大学, 理学部, 講師 (30175492)
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Keywords | 徐冷モンテ・カルロ法 / タンパク質の立体構造予測 / β-シート構造 / ペプチドの溶液内構造 / NMR / エネルギー最小化 / タンパク質の折りたたみ / BPTI |
Research Abstract |
本年度中に、ウシ膵臓トリプシン・インヒビター部分ペプチド(BPTI[16-36])の立体構造に関する実験(NMRの測定)とエネルギー計算(徐冷モンテ・カルロ法)から新たに得られた主な知見は次のとおりである。 (実験)予想に反してBPTI[16-36]は有機溶液中では天然のタンパク質中でとるような安定なβ-シート構造をとらないことがわかった。これは、当然検出されるべき2本のβ鎖間の水素結合の存在を示す相互作用が見られなかったことから得た結論である。しかし、一次構造上数残基離れたアミノ酸の側鎖間にいくつかの相互作用が検出できたことは、このペプチドが溶液中でも一定の高次構造を保持していることを示唆している。 (計算)BPTI[16-36]の回転させ得る97の二面角について、1回の試行につき10^4回の徐冷モンテ・カルロ法によるエネルギー最小化計算を行った。20回の試行の結果得られた最終構造は類似性から4つのグループに分類できた。この中で7つの構造からなる最大のグループは、天然のタンパク質中での構造を最小エネルギー構造として含んでいた。ただし、計算によって得られた全構造中の最小エネルギー構造は他のグループに属していたことから、タンパク質中におけるBPTI[16-36]の構造は、溶液中においては準安定状態であることが明らかになった。どちらのグループが現実に近いかは、実験結果と比較対照中である。また、計算による構造は程度の差はあるがすべてループ状であり、特に最大グループに属している構造は鎖間に水素結合が存在しないにもかかわらずβ-シート構造ときわめてよく似ていて、しかも天然のものと同様に右に捻れた形態をとっていた。以上の結果をもとに、従来考えられてきた[16-36]の部分がBPTI分子全体の折り畳みの起点となるとの説とは異なり、この部分が正常なβ-シート構造をとるためには鋳型となる他の部分構造(おそらくα-ヘリックス)が必要であるとの説を新たに提案した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 中沢 隆: "β-Sheet Folding of Fragment (16-36) of Bovine Pancreatic Trypsin Inhibitor as Predicted by Monte Carlo Simulated Annealing" Protein Engineering. 5. 495-503 (1992)
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[Publications] 岡本 裕幸: "α-Helix Structure of Parathyroid Hormone Fragment (1-34) Predicted by Monte Carlo Simulated Annealing" International Journal of Peptide and Protein Research. 41or42. (1993)