1992 Fiscal Year Annual Research Report
Na^+/H^+交換輸送系の構造と機能ー細胞増殖因子による活性化のメカニズム
Project/Area Number |
04680206
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
若林 繁夫 国立循環器病センター研究所, バイオサイエンス部, 室長 (70158583)
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Keywords | Na^+ / H^+交換輸送系 / 細胞増殖因子 / 浸透圧刺激 / 細胞内pH / タンパク質リン酸化 / カルモデュリン / 部位特異的変異導入 / 細胞内制御因子 |
Research Abstract |
Na^+/H^+交換輸送体(NHE)は細胞膜に普遍的に存在し、細胞内のpH,Na+濃度、細胞容積を制御している。平成4年度は、この輸送体の活性調節の機序を二つの側面から分子レベルで解析し、次の知見を得た。 1.輸送体のリン酸化。増殖因子による活性化に伴い特定のセリン残基のリン酸化が増加することが知られている。細胞質ドメインのいくつかの欠失変異タンパク質を作成してリン酸化ペプチドマップによるリン酸化部位の同定を行い、増殖因子感受性部位を含むすべての主要なリン酸化部位が細胞質ドメイン内のC末側領域(アミノ酸636-815)に存在することを明らかにした。他方、この領域を欠失した変異タンパク質を発現している細胞では依然として増殖因子による活性化が見られるので、輸送体自体のリン酸化は必須ではないことが明らかになった。従って輸送体の活性化には何らかの細胞内制御因子が関与していると考えられる。 2.カルモデュリン(CaM)との相互作用。この輸送体の活性調節に関与する細胞内制御因子の一つの候補であるCaMと輸送体との相互作用を調べ次の知見を得た。(1)NHE1(アイソフォーム1)はCa^<2+>イオンの存在下で高親和性にCaMに結合する。(2)CaMの主要な結合部位は輸送体細胞質ドメインの636番目から始まる約20個のアミノ酸からなる領域である。(3)この領域にCaM結合が起こらなくなるような変異を導入すると、最大輸送活性はあまり変化しないが、増殖因子や高浸透圧刺激による輸送活性の促進効果が著明に阻害される。以上のことから、細胞質ドメインの中間に位置するCaM結合部位が、CaMの結合あるいは別の機構でNHE1の輪送活性を最大限に活性化することに関与していると結論された。しかし、CaM結合だけでは活性調節のすべてを説明することは不可能であり、他の必須の細胞内制御因子を同定することが必要である。
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