1992 Fiscal Year Annual Research Report
スピントラップ反応を利用した高感度DNA損傷検出法
Project/Area Number |
04680207
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
桑原 幹典 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (10002081)
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Keywords | DNA損傷 / 放射線 / スピントラップ反応 / 電子スピン共鳴法 / 高速液体クロマトグラフィー |
Research Abstract |
放射線や突然変異原物質などによるDNA損傷は癌誘発と強く関連している。今日、発癌因子のリスクを評価する観点から、発癌因子によって作り出される微量のDNA損傷を検出できる感度の高い方法が切望されている。スピントラップ反応は、ある分子がフリーラジカル反応を介して別の分子に変化する場合、その反応の途中を特殊なトラップ剤でトラップし、それを電子スピン共鳴(ESR)法で測定し、反応の開始から分子変化に至るまでの全過程を解析する方法である。さらに、ESR法は検出感度が優れているので、微量の生成物を定量できる。発癌因子によるDNA損傷誘発はフリーラジカル反応であるので、この方法が適用できる。それゆえ、この方法を適用すれば、発癌因子によるDNA損傷誘発反応の開始から、最終生成物(損傷)に至る反応過程を明かにし、さらに損傷の種類と量に関する情報を得ることができる。本研究は、DNAにおけるこの方法の適用の確立を目的として行われた。 まずDNAのモデル化合物としてチミンおよびシトシンのオリゴマー、oligo(dc)_<10>、oligo(dT)_<10>、を合成し、実験を行った。これらの分子に最初に放射線照射し、フリーラジカル反応を開始させた。次いで、スピントラップ剤により反応の途中をトラップし、反応を停止した。この段階では、損傷に至る種々の反応中間体が一つのオリゴマー上に作られている。その各々を分離するため、オリゴマーを蛇毒のホスホジエステラーゼでモノヌクレオチドに分解し、さらに高速液体クロマトグラフィーで反応中間体を一個一個分別した。最終的にESR法により反応中間体の定性的・定量的測定を行った。その結果、オリゴマーの断片化ならびに塩基変性のラジカル反応過程が明らかになり、DNAへの適用が可能になった。現在、研究をDNAや細胞レベルに進展させている。また、本成果を米国生化学会誌に投稿中である。
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