Research Abstract |
福井県大の市は,大野盆地を伏流する豊富な地下水を住民の飲料水としてきたが,昭和40年頃から,冬季の豪雪時に井戸涸れが発生するようになってきた。これは,地下水を屋根や道路の消雪用として大量に使用したこと,真名川上流のダム建設による盆地部の流量減少が主な原因とされているが,流域全体の景観生態系の変化にも原因があると考える。そこでまず,地下水の日変化と降水量の関係を分析し,冬季の降水(降雪)は地下水の低下をまねき,それ以外の降水は地下水上昇に関与していること,また,水田の潅水期には地下水位が高くなることを確認した。次に,流域の景観生態系の変化を明らかにするため,現地調査,終戦直後撮影の空中写真,旧版地形図より昭和20年代の盆地西部の土地利用図および景観生態学図を作成し,同様の方法で作成した現在の土地利用図および景観主態学図とを比較することによって,景観生態学的機能の変化を盾的に明らかにした。すなわち,扇央部の森林地帯が開墾により失われ,水田化・乾田化されたことによって非潅水期の地下水涵養能力が低下し,また,赤根川流域の河辺林と湿地が消滅したことにより,地下水涵養水質浄化機能が低下した。さらに,市街地の拡大は地下水消費の増大と雨水浸透量を減少させた。 長野川小渋川流域では,昭和36年に大西山崩壊や支流・四徳川において大災害が発生した。被災地の災害前の土地利用や景観構造をしるため,終戦直後の空中写真や旧版地形図などの判読によって,土地利用図,景観主態学図を作成した。さらに、災害直後の空中写真によって山地崩壊,崖崩れなどの災害の実態の把握を行い,災害後どのように景観構造が変化したかを,現況との比較を通して分析を行っている。
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